瀬戸弘司が体現する「好き」を見失わず生きられるリズム 誕生日を機にその魅力を再考

 感情を失った弟シリーズをはじめとしたホームムービーを楽しんでいたら、いつしか大手企業からオリジナルソングを依頼されるまでになっていった。彼を取り巻く環境の変化に、いち視聴者として「すごい」と感動しながらも、「大丈夫かな?」と不安を感じたものだ。
現在、日本のYouTuberとして活躍しているのは、圧倒的に20代が多い。アイドル的な人気を誇る人もいるなかで、瀬戸弘司の存在感はあまりにもいぶし銀すぎる。そして若さと勢いでアップし続けるYouTuberたちに対して、瀬戸弘司の動画更新頻度は下がっていった。それは、日本のYouTuber界の創生期から成熟期へのタイミングだったのだろう。

 視聴者側もYouTubeの楽しみ方がわかり始め、リアルタイムの情報を得るチャンネル、クオリティの高い動画を待ち望むチャンネル、刺激を味わうチャンネルと、安心感に癒やされるチャンネル……と、それぞれ動画クリエイターに求めるものを分けて考えるようになっていった。

 そんな中で、瀬戸弘司のチャンネルは、まさにYouTubeクリエイターのコピー「好きなことで、生きていく」を模索し続けることに尽きる。今や、再生回数で爆発的な金額を稼ぐこともできるYouTuber。だが、瀬戸弘司が目指しているのはそこではない。

 好きなものを迷わず買えるくらいの収入と、自由な時間の両立。忙しさや義務感で、自分の「好き」を見失わずに生きられるリズムだ。お金に困らず、仕事に忙殺されない暮らしは、もしかしたら来たる超高齢化社会において、私たちみんなの理想になっていくのかもしれない。

瀬戸弘司、今後の展望を語る。

 瀬戸弘司の動画は、生存確認とよく言われる。文字通り生きていた、と安心するのだが、その元気な顔を見ると、その理想的な暮らしを私たちも諦めなくていいのだとうれしくなるのだ。好きな人と、好きなことをして、好きなタイミングで働く。そんな瀬戸弘司という生き方を、これからも私たちに見せ続けてほしい。

(文=佐藤結衣)

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