“暴力わらしべ長者ゲーム”『JUDGE EYES:死神の遺言』、最大の魅力はストーリーにあり!

 登場人物もまた然り。八神の相棒にして兄貴分、元ヤクザの海藤さん。ネカフェで寝泊まりしているハッカーのツクモ。そして八神の元同僚たちなど、みんな個性的で、優しくて、人間ができていて、熱い信念を持っていて、一緒にいるだけで楽しいキャラばかり(本作はキムタクがキムタク役を演じていると話題になりましたが、個人的には中尾彬が“誰もが思い描く中尾彬の最大公約数”を演じているのも嬉しかったです)。陰惨な事件に対して、こうしたギャグやユーモラスな登場人物たちが良いスパイスになっています。

 もしもこれがゲームでなくTVドラマだったとしても、きっと彼ら・彼女らのことが好きになったでしょう。役者の力、そしてシナリオの力を感じますし、本作は脚本が完成してからゲームを作っていったそうですが、このやり方は大成功だったといえるでしょう。

 とはいえ、やはりこれはゲームでやるのが一番だと思います。何故なら「シナリオで最高に気分が盛り上がった状態で、戦闘に入って人を思い切りブン殴れる……!」こうした体験は映画でもドラマでもできません。プレイヤーを実際に操作するゲームだから体験できる痛快さです。本作はシナリオとゲームシステムが見事に合致した非常に完成度の高い作品といえるでしょう。

 「キムタクが如く」というインパクトが前に出すぎているので、いわゆる「ネタゲー」に見えてしまうのも仕方ないでしょう。しかし「ネタゲーでしょ?」で敬遠するにはもったいない作品です。ちょうど7月に廉価版が出ましたので、このタイミングでプレイしてみてはいかがでしょうか?

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

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