『FGOオーケストラ』クリエイター陣が語る、コンサート後の“手応えと葛藤”

INTERVIEW 編曲:深澤秀行

ーー今回のコンサートで「これは成功だ!」と確信した要因は?

深澤:芳賀さんが最初から「生演奏で、音楽をしっかりと届ける」という軸を持っていたからこそ成功したんだと思います。PAを使わないという決定が成功したのも、芳賀さんのブレなさがあったからですよ。

ーー深澤さんにとって、このプロジェクトのターニングポイントはどこでしたか。

深澤:最初の編曲打ち合わせですね。演奏家たちにモチベーションを与えるような編曲というのがオーケストレーションにおいては必要なんだと実感させられて、これまで自分考えたことのなかった領域だったので「オーケストレーションの勉強をイチからするので8年待ってもらっていいですか?」と言いたくなったくらいなんですけど(笑)。自分なりには今まで以上に一つひとつの楽器の役割や曲やモチーフの構造にすごい気を配って、多重構造になるようなことを考えて編曲するようになったのは大きかったです。

ーーご自身の新たな収穫としても、そこで得た成長が大きかったわけですね。

深澤:でも、終わってから思うこともあって。オーケストラコンサートって、お客さんと演奏家がいる生々しい場所なんですけど、僕が普段やってるのは、監督や音響監督や作品から自分が直接解釈したものとか、そういうものを自分で考えて作って録音して、見たり聴いたりする、真逆の仕事なんです。だから、今回のコンサートを通過して普段の作業に戻ったとき、まったく音楽を聴く耳が変わっている自分に気づいてしまって。

ーーそれは面白いですね。今後は芳賀さん音楽を手掛ける『劇場版Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-』も控えているわけですから、そこでどのような変化が起こったのか感じられるのを楽しみにしています。

深澤:間違いなく影響してくるでしょうね。どうしてもオーケストラ版の「神聖円卓領域:キャメロット」が頭の中に流れちゃってますし(笑)。でも、いい経験であったことは間違いないので、今後も関わらせていただけるなら、悩みながら自分の変化を楽しめるようになりたいと思います。

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