『FGOオーケストラ』クリエイター陣が語る、コンサート後の“手応えと葛藤”

『FGOオーケストラ』ライブ盤インタビュー

INTERVIEW オーケストラ編曲:三宅一徳

ーー今回のコンサートで「これは成功だ!」と確信した瞬間は?

三宅:5月4日公演に向けてのリハーサル初日ですね。演奏者も前回から3割くらい入れ変わっているし、まずは様子見くらいの気持ちで観に行ったら、それを良い意味で裏切られるくらい高い完成度で。「これはすごいことになる」と思いました。4月の公演からは1カ月間空いてたのですが、そのブランクを感じさせない、都響のプライドというか、そういった気概をひしひしと感じたリハでした。こちらもある程度のものは当然要求するんですけど、その上をいってやる的な感覚というか。

ーーコンサートのリハ期間で、三宅さんが印象に残っていることは?

三宅:4月公演のコンサートリハでオーケストラのメンバーから芳賀さんに「『聞き慣れたメロディ』ってタイトルはちょっと意味ありげなんですけど、どういう解釈をすればいいですか?」という質問がでたんですよ。要するに、奏者としては譜面上である程度「こう弾きたい」というのを持っているはずなのに、さらにもう一歩踏み込んでアプローチしようとしてくれたってことで、それはすごく嬉しかったです。彼らとしては疑問に思ったことを素直に口に出しているだけなのかもしれないんですけど。

 昔、大学時代に現代音楽のすごく複雑な曲が流行っていて、演奏家の人に「これ、わけわからなくないですか?」って質問したことがあって。そうしたらその人は「とにかく自分は自分の勉強してる範囲、自分の興味のある範囲でしか理解できない。だからそういう時は無色透明になって演奏する。そうすると自分には理解できないことでも、何もフィルターがかかっていない状態の演奏なら、聴き手には何か伝わるかもしれない」って言ってたんですよ。でも、そこに「自分がやるならどうする」って考えるところまで踏み込んでくるって、自分の印鑑を押してくれるくらい責任を持ってくれるってことじゃないですか。そうやって、コンサートマスターの山本さんが、本番までに弦セクションをすごく丁寧に仕上げてくださいました。

ーー1日目、2日目でそれぞれ一番良かったと思えたところを教えてください。

三宅:4月公演は管楽器のセクションの集中力がすごかったんです。「運命〜GRAND BATTLE〜」にある超難所を次々と完璧にクリアしていく様子はそれはお見事でした。5月の公演では、弦セクションの安定感と全体の一体感を伴うグルーヴが印象的でした。

ーー多くの経験をお持ちの三宅さんですが、ご自身のなかで今回新たな収穫はありますか?

三宅:今回みたいな打楽器をガンガン叩き続ける様なタイプの曲を、あえてPAなしでやるスタイルは、今まで音量バランスの点で成り立たないと思ってたんですよ。それがある程度条件を整えればできるんだとわかったのが新たな収穫でした。もともと生の音で勝負したいとオファーをされていたので、そこにしっかりと応えることが最も重要な課題でしたので。今後自分が手がけるコンサートにおいても、ある種の可能性を感じたといえます。

ーーライブアルバムとしてリリースされるにあたり、ここに注目してほしいというポイントは?

三宅:当日どこを見ていいかわからなかった人は、カメラでクローズアップされている部分などを確認いただくと面白いでしょうね。コンサートでご覧になられていない方も、生で観た人とまた全然違った視点で楽しめると思います。また、CDと映像で音源が違うところもあるので、そこを比較してもらうのも良いかもしれません。

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