YouTubeが誤ってセキュリティ教育チャンネルを凍結 問われる不正動画自動検出の精度
世界最大の動画共有サイトYouTubeは、サイトの健全性を確保するために不適切なチャンネルや動画の削除処理を日々実行している。こうしたなか、不適切動画の検出が完璧ではないことを露呈する事件が起こった。そして、この事件の原因を探っていくと、現代社会が直面しているテクノロジーの問題に行きつくのだ。
花火の動画を上げようとしたら……
テック系メディア『The Verge』は3日、YouTubeのセキュリティ教育チャンネルのアカウントが一時凍結したことを報じた。凍結されたのはSTEM教育の一環としてハッキング技術について解説する動画シリーズ「Cyber Weapons Lab」を公開している動画チャンネル「Null Byte」で、23万人のチャンネル登録者を抱える無名とは言えないチャンネルだ。同チャンネルの制作に携わるKody Kinzie氏は、たまたま花火を打ち上げる動作をアップロードしようとして失敗し、アカウントが凍結されたことに気づいたのだった。
上記のアカウント凍結に関して、同メディアがYouTubeに問い合わせたところ、スポークスパーソンは誤って不正フラグを立ててしまったことを認め、現在ではアカウント凍結が解除されていると答えた。「わたしたちのサイトにある動画の量が膨大なため、時には間違いを犯すのです」とも語った。
YouTubeはハッキング等の反社会的な行為を助長する恐れのある動画を違反動画として削除しているが、学術的あるいは芸術的な目的で反社会的行為を取り上げる動画に関しては許容している。しかしながら、過去には白人至上主義に反対する内容の動画が白人至上主義を主張する動画といっしょに削除されたということもあった。
結局は営利団体
以上の動画削除騒動に関しては多数のメディアが報じており、専門家の意見も紹介している。US版『Forbes』の記事にコメントを寄せているセキュリティ研究者のChrissy Morgan氏は、YouTubeは何が許容されてどんな動画が共有され続けられるのかに関して明確に示す必要がある、とコメントした。また、動画が削除されても沈黙するしかない無名の動画提供者を懸念している、とも述べた。
テック系メディア『The Register』は、セキュリティ企業Tripwireの研究開発部門マネージャーであるTyler Reguly氏の発言を紹介している。同氏は「もしYouTubeがカネを払ってくれる広告主を欲しければ、広告主が許してくれるようなコンテンツになるように配慮しなければならない」と述べ、「動画共有サイトは稼ぐためにあるのであって、社会を良くするためにあるのではないことを忘れがちである」とも言った。
また、YouTubeでセキュリティ関連チャンネルDemmSecを運営するホワイトハッカーDale Ruane氏は、動画のタグやタイトルが削除すべき動画かどうかを判断する材料になっているようだ、と自身のチャンネル運営経験からコメントを寄せている。