『BanG Dream! 3rd Season』モーションキャプチャ撮影現場に潜入 監督・アクターにも直撃
「演奏のリアリティは保ちつつショーとして楽しんでもらえるように」(柿本)
――『BanG Dream! 2nd Season』と今回の撮影を含め、印象に残っているエピソードはありますか?
すぎやま:『BanG Dream! 2nd Season』では、初めての現場だったので「こういう感じで作られているんだ」ということにとても驚きました。で、アニメのオンエアを実際に見て「これが自分の動きなんだ!」と感激したことを覚えています。
――実際に動いているところを画面越しに見ると、全然違う気持ちになりそうですね。
すぎやま:「こんな感じなんだ!!」と、とても感動しました(笑)。
牛谷:今回モーションキャプチャ自体は4回目なのですが、アニメを見たこともあり、以前よりもキャラクターの視点になってどう動くかを考えられるようになってきたかなと思います。
Asucah:『BanG Dream!』のキーボードのキャラクターは、カッコいい系というよりカワイイ系の子が多い印象です。なので、キャラクターごとに同じカワイイでもそれぞれ演じ分けるの必要があるので、演じ分けに気をつけていますね。
――とくに、演じ分けが大変だったのは?
Asucah:RAS(RAISE A SUILEN)のパレオちゃんはかなり激しいですね。Roseliaの(白金)燐子ちゃんも動きは大きいのですが、個性的なので演じやすいかな。ただほかのバンドはポップでカワイイ感じが共通しているので、キャラをしっかり理解しながら工夫していますね。私の中では、横のステップ重視とか、上半身の動きを中心に、などリズムのとり方で違いを見せるようにしています。
――エンターテインメントを意識したバンドリライブだからこそする動きみたいなものもあるわけですよね。
Asucah:はい。パレオちゃんだと、回転しながらキーボードを弾いたり、右手で鍵盤を弾いて左手で煽るみたいな動きも彼女ならではなのかなと。
――実際のライブで激しい動きをしながら演奏もしているのは凄いですよね。普通ならやらない動きがアニメになって、それがリアルライブとのリンクになるという。逆に、あえて不自然さを出している部分ってあるんですか?
柿本:ありますね。伝わる動きと伝わらない動きというのがあると思っていて。演奏についてはプロの方が見ればすぐわかると思うんですけど、それ以外はライブとしての華やかさや楽しさをお客さんに伝えるための動きや表情だったりするので、その2つは切り分けて考えています。演奏しているところのリアリティは保ちつつ、ショーとして楽しんでもらえるように、というスタンスはブラさずにやれているつもりです。
原田奈美(株式会社ソリッド・キューブ 代表取締役):あと、ボーカルの方と他パートの方では、キャスティングの方向性を分けています。ボーカルは表情や動きが一番目立つポジションなので、歌手の方や演技力のあるモーションアクターさんを中心に、他パートの方は実際にその楽器をやっているミュージシャンの方にお願いしています。
――2nd Seasonを踏まえて「次はこうしよう」と考え、実際に成功していることは?
柿本:作り終えて、というよりは、アニメ2nd Seasonの前にRoseliaのOP『BRAVE JEWEL』のMVを撮った際、衣装の重さ・厚さを考えなければと思ったんです。現場のプレビューではアクタースーツだからそこまで派手に見えなかったんですけど、実際にアニメとして見てみると、すごく衣装の揺れがあって「腰振りすぎじゃない?」と思ったところもありました。今回はそれを踏まえて、最初から少し抑えめに演技してもらっています。
新家:最終的にどういう動きにしたいかは、監督やその案件でディレクションをされる方の判断になります。なので、スタジオ側からは「こういうことができますよ」とか「データ的にはこうなります」ということは提示させていただきつつ、そのあたりの細かいジャッジはお任せして、収録した内容をできるだけきれいな形で納品することを心がけています。事前準備に関しても、サンジゲンさんと資料のやり取りを頻繁にさせていただいて、提案や確認もしていました。
佐藤純恵(以下、佐藤):アクターさんがキャラクターを複数演じ分けされているので、マーカーを貼ったり楽器を入れ替えしたり、という準備を曲やバンドごとに転換していくにあたり、いかにスムーズにできるか、リラックスした状態で臨んでいただけるかに気を配っています。
新家:そういう意味で、ドラムセットを入れ替えるときはめちゃくちゃ順番を考えましたね(笑)。2nd Seasonの撮影のときに『BanG Dream!』はバンドごとにドラムセットの構成が違うので、できるだけスムーズに入れ替えられるようにと考えていて、撮影するときに「今日この順番で撮影しようと思うのですが、大丈夫ですか?」と確認し、問題なければそのままやっていくという流れにしていました。
――制作側もアクターのみなさんも、オンエアとしてどういうものが出てきたかを見ているからこそ、次はこうしようとアップデートされている部分がかなりあるようですね。
新家:アクターさんのリハ動画を事前にいただいて、その演技の内容によって「スタジオ側でこれを準備しなきゃいけない」と判断して、テストを行ったりもしています。
――リハ動画というのは、実際にアクターさんが歌ったり演奏をしているライブパートの動画ですよね?
佐藤:そうです。バンド演奏なのですが、台の上に登ったり(笑)。あまり普通のバンドの演奏ではしない動きが織り込まれているので、その距離感を考えながら設定や大道具を決めていきます。
――DJ卓もキーボードも、現場ではこんなに色々なものを使っているんだと驚きました。
柿本:DJの踏み台に椅子を使ってますからね(笑)。
ーー椅子の背もたれを持つか持たないかでも議論が交わされていました。
新家:腕の演技自体をアニメーションの工程で調整していただく前提であれば問題ないのですが、キャプチャ側としてはアクター側の動きがそのまま撮れてしまうので、CGのシーン上にはない背もたれを持つ動きよりも、持たない方がいいのではと思い、監督の方にお話しさせていただきました。