Dubreq Stylophone Beatbox、Empress Effects ZOIA……ユニークなガジェット系シンセをピックアップ
Empress Effects ZOIA
Empress Effects ZOIAは、様々なモジュールをレゴブロックのように組み合わせることで、仮想ペダルボードやモジュラーシンセサイザー、ルーパー、シーケンサーなど様々な音楽制作ツールに構築できる、ペダルタイプの画期的なモジュラーシステムだ。
本体には、8×5のボタングリッド上にモジュールが配置されており、それぞれ複数のパラメーターで構成されている。各パラメーターはグリッド状のボタンから、モジュールの特定の機能にアクセスが可能。ボタン同士の入出力を、まるでモジュラーシンセサイザーのように自由にパッチ接続できるというもの。
本体には、Empressならではの高品位なエフェクトモジュール(リバーブ、ディレイ、コーラス、フェイザー、コンプ、オーバードライブ、キャビネットシミュレーターなど)があらかじめ搭載されており、ライブ演奏中に簡単に呼び出すことができる最大64個のパッチを作成/保存することも可能。もちろん、パラメーターの知識があれば、例えばLFOでVCAを変調させてトレモロエフェクトを作り出すなど、オリジナルのエフェクターをデザインして再構築することもできる。
なお、ZOIAのユーザーコミュニティに参加すると、ユーザー同士でオリジナルのパッチを交換したり、シェアしたりすることもできる。見た目はガジェット楽器っぽいが、使いこなすほどに深みが出る名機といえよう。
BASTL INSTRUMENTS KASTLE V1.5
最後に紹介するのは、チェコのメーカーBASTL INSTRUMENTSから発売された、なんと手のひらにすっぽり収まる超小型のモジュラーシンセ。ヘッドホン出力や、2in/outポートを備えているので外部機器との接続も可能。3本の単三電池、あるいはまたはマイクロUSB給電により駆動するシステムになっている。
本体には長方形の小さな穴が空いており、そこが付属のマイクロパッチケーブルを差し込む「パッチポイント」。ピッチコントロールやウェーブシェイプコントロール、ステップドボルテージジェネレーターなどさまざまな機能が盛り込まれており、パッチングを変えたりオシレーターツマミを直感的に回したりすることにより、ノイジーなサウンドやドローン音、柔らかいアナログチックなサウンドまで、さまざまなバリエーションの音色を楽しむことができる。
パッチシンセというと、非常に複雑で難解なイメージがあるが、DIYフレンドリーなデザインの「KASTLE V1.5」なら、オモチャ感覚で楽しみながらパッチの仕組みを学ぶことが出来るかも知れない。ポケットにもスッと収まるしヘッドホンをつなぐことも出来るので、いつでもどこでも持ち歩き、パッチシンセの楽しさを味わえるだろう。
以上、今回はガジェット系の楽器を紹介した。どれも電池駆動式で、見た目も可愛いモノばかり。シンセの仕組みなどを学ぶための「最初の一歩」としても重宝しそうだ。
■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。