Dubreq Stylophone Beatbox、Empress Effects ZOIA……ユニークなガジェット系シンセをピックアップ
毎回、気になる楽器や機材を紹介する本コラム。今回は、ガジェット系の楽器を久しぶりにピックアップしてみたい。
Dubreq Stylophone Beatbox
まずは、片手で持てるコンパクトなリズムマシンStylophone Beatbox。こちらは英国のメーカー「Dubreq」が、1968年に開発した子供用のシンセサイザー「Stylophone」のバリエーションの一つ。ルーパー機能が内蔵されており、プリセット音を組み合わせたリズムパターンを作成することができる。
「Stylophone」の最大の特徴といえば、「スタイラス」という名のタッチペンを使った演奏ができること。本体にある円形の金属パッドに「スタイラス」を接触させると音が鳴る仕組みだ。このパッド部分は13個に分割されており(よく見ると、黒鍵と白鍵の1オクターブ分が、ぐるっと1周している)、場所によって様々な音色が奏でられる。「サウンドバンク」は3種類あり、本体左側に搭載されたスイッチで切り替えることによって13x2=26種類のドラム音色と、音階になったベースサウンドを呼び出すことができる。
ちなみに「バンク1」にはヒューマンビートボックスによるドラム音色や、スクラッチ系の音色、カウントを叫ぶ声などを収録。「バンク2」はリズムマシンや打ち込みパーカッション系のサウンド、そして「バンク3」には1オクターブ分のベースサウンドが収録されている。
本体右側には録音、再生をするためのボタンが搭載されており、内蔵されたルーパー機能を使って音色をどんどん重ねていき、オリジナルのリズムサウンドやベースパターンを作成することが出来る。ただ、作成したリズムパターンの保存はできないし、電源をオフにするとリセットされてしまうのだが、この「一回性」こそガジェットっぽくて、遊び感覚で楽しめる要素ともいえる。
本体裏側にはピッチを調整するツマミも搭載。他の楽器や、音楽に合わせて演奏する際はここで調節すると良いだろう。単三乾電池3本で駆動するため、持ち運びも便利。これからの季節、野外でピクニックするときなどバッグに忍ばせていけば、誰かのアコギに合わせてリアルタイムでリズムを演奏するなど、活躍する場がたくさんありそうだ。
Dubreq Stylophone S2
続いては、そのDubreq社の代表モデルである「Stylophone S2」を紹介。こちらはデビッド・ボウイが『Space Oddity』のレコーディングで使用し、KraftwerkやOrbitalもステージで演奏するなどミュージシャンをも虜にしてきた名器「Stylophone」の復刻版である。オリジナル「Stylophone」は当時、300万台以上も販売されるも1975年に生産を終了、本機は2012年にフルスペックのアナログシンセサイザーとして蘇ったもの。
オリジナルの生みの親、ブライアン・ジャーヴィスの息子ベンがイニシアチブを取って開発した「Stylophone S2」は、金属鍵盤が1オクターブから3オクターブへと拡張。スタイラス(タッチペン)で鍵盤をタッチして音を鳴らすという基本構造は同じだが、その音色をより細かくエディットすることができるなど、本格的な電子楽器としても充実したスペックが搭載されている。
なお、「Stylophone」の機能やルックスをそのまま受け継いだ「Stylophone S1」や、「Stylophone」にエンベロープ、フィルター、LFO、サブオクターブやPWM(パルス幅変調)といったアナログシンセサイザーの基本性能、さらにはリボンコントローラーも搭載した「Stylophone GEN X-1」も現行モデルとして販売されており、昔ながらのデザインが好きな人にはこちらもオススメしたい。