『四月一日さん家の』五箇公貴Pが語る、“VTuberドラマ”の可能性 「アニメと人間の中間的な魅力がある」

『四月一日さん家の』五箇公貴Pが語る、“VTuberドラマ”の可能性 「アニメと人間の中間的な魅力がある」

合間の「笑い声」は エンターテイメントとして成立するために必要な要素

ーー1話を拝見したのですが、『フルハウス』のように合間に笑い声が入ってたことも印象的でした。

五箇:そうですね。笑い声は最後まで入れるか迷ったのですが、設定上は三人をお客さんが見ているということで、『フルハウス』も『やっぱり猫が好き』もそうですが、「ここ笑っていいんだ!」というところを与えた方が取っ付きやすいんじゃないかなと。「ここ笑っていいですよ!」というところがないと、すごくハイブローなものに見えてしまい、お客さんが完全に置いてけぼりになるかもしれない。それでは本末転倒だなと思いました。なので、エンターテイメントとして成立する要素として笑い声は必要じゃないかとすごく議論し、最終的に「あの空間は女の子たちだけの空間だから、女の子のお客さんがいる」というところに至りました。

ーーVTuberファンじゃなくても楽しめるように設計されたんですね。

五箇:それが結構大きいです。あとは、アニメっぽいものに対して女性が割と嫌悪感を持つことが多いんじゃないかと思っていて、それを「大丈夫ですよ、女の子が見ても面白いものですよ」という風に伝えたい、ファンじゃない人たちにも見て欲しいという思いはすごくあります。一般化して間口を広げたいですね。この番組を見た開発者やVTuberの人たちが「これが受け入れられたら他のやり方もあるよね」と思ってくれたら、カルチャーとしてさらに広がってどんどん面白くなるだろうなと思っています。

ーーテレビならではの発信の仕方ですね。

五箇:そうですね、VTuberの子たちがYouTubeでドラマをやることはできると思うのですが、ある意味テレビは拡声器なので、彼女や他のVtuberたちがどう広がっていくかを考えた方がいいと考えていました。

ーーだからこそ、今回監督や脚本の方のキャスティングの布陣となったのでしょうか?

五箇:そうですね、リアルな女優さんが演じても成立するように制作できる人たちを集めました。

ーー脚本や監督陣と打ち合わせする上で「これは大事にしよう」という決まりごとはありましたか?

五箇:ルックが3DCGアニメなので、次のカットをネズミに変身させてしまったりと、ファンタジーな内容にもできてしまいます。でもそれをやってしまうとアニメになってしまう。なので、日常的なことの延長線上にあることを話にするべきなんじゃないかということは、すごく議論になりました。最終的に「VTuberドラマ」と謳って、VTuberが女優さんとして別の役を演じ、会話やシチュエーションで起こることや、彼女たちのリアクションの面白さを大事にすべきじゃないかとなり、手堅く真面目に作っています。

ーーそんななかで、猿楽町双葉はオリジナルキャラクターです。

五箇:1人ぐらい新人がいてもいいかなと思ったのと、昔の角川映画みたいに、先に出演が決まってデビューする人がいたらどうなるんだろう? という考えもありました。

ーーなるほど。技術面のスタッフと一緒に作成される上で大変だったことはありますか?

五箇:技術を統括している赤津慧さんというプロデューサーと向井達矢さんという実写専門のチームを僕が全体で統括しているですが、最初監督を含め実写陣とITのチームが文法から言葉から全て違うんですよ。全然話が噛み合わない。ただ、お互いが「これをやらないと進まない」となって、どんどんお互いを理解しようとしてくるんです。最初は「本を一花が持ってきて、見せてから棚にしまう」という動作があったら「これしまっておいてください」と伝えると「しまうというのはどこにしまうんですか?」「本棚のどこですか?」となるんです。つまり、プログラマーチームは座標のグリットを細かく設定してもらわないと戻せない。プログラムを書く数学的な人たちとテレビやドラマ業界の文系の人たちが同じところが作業をするこの感じ、最初はヒリヒリしましたね。

 そのような形でCGチーム、テクノロジーチームの進行具合や容量を考えながら、僕らも脚本を作っていきました。だんだん回ってくるとお互いフォローし合うっていう形になってきて、今までしたことがない体験だったのでそれがすごく良かったです。

ーー業界全体で考えても、非常に新しい取り組みです。。

五箇:そうですね。実写の演出方法を使える、だけどテクノロジーが紐づいているっていう、こんなことは絶対ないので。すごい面白かったですし、そこは1番響いたところですね。

ーー第二弾、三弾と続いていけば今回得られたノウハウを応用して、さらに面白いものが作れる可能性がありますね。

五箇:そうなんです。だから続けていきたいなと思っています。今回の3人じゃなくても、別のキャラクターをオーディションで入れることもできますし、今回できなかった新しい部屋を作ったり、外の公園だけシチュエーション1個増やしたり、増築していくように外側に広げていくと、『四月一日さん家の』の世界も広がっていくんじゃないかと思います。

(取材・文=平沢花彩)

■番組情報
ドラマ25『四月一日さん家の』
テレビ東京、テレビ大阪ほかにて4月19日(金)スタート
毎週金曜よる0時52分~1時23分放送
出演:ときのそら、猿楽町双葉(新人)、響木アオ
企画・構成:酒井健作
脚本:ふじきみつ彦、じろう(シソンヌ)、土屋亮一、堀雅人、熊本浩武
監督:住田崇、湯浅弘章、渡辺武、太田勇
音楽:遠藤浩二
チーフプロデューサー:大和健太郎(テレビ東京)
プロデューサー:五箇公貴(テレビ東京)、赤津慧(ハロー)、向井達矢(ラインバック)
制作:テレビ東京、ハロー
制作協力:ラインバック
製作著作:「四月一日さん家の」製作委員会
(c)「四月一日さん家の」製作委員会
公式サイト: https://www.tv-tokyo.co.jp/watanuki/
公式Twitter:@watanukisanchi
公式Instagram:@watanukisanchi

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