『名探偵ピカチュウ』『シン・ゴジラ』……“モーションキャプチャー”が可能にする新時代の映像表現
この技術を使えば、CGで構築された美少女の動きを中年男性が演じることも可能となるはずだ。そんなことが果たして許されていいのかという気もするが、すでに日本では、リアルタイムでCGキャラクターを演技者にシンクロさせ配信する「バーチャルYouTuber」によって、それは現実のものとなっている。日本には、歌舞伎に登場する女性の役を、女形なる男性の役者が演じる文化があるので、このような性別を超えた演技や表現というのは、比較的受け入れられやすいところがあるのかもしれない。
そんな日本でも、『シン・ゴジラ』(2016年)では狂言によって培われた野村萬斎の動きを、「モーションキャプチャー」によってゴジラへと移植し、クリーチャーでありながら、同時に神のような威厳を持つという、二重的な表現をも行っており、そこでは荘厳な精神性すら反映しているように感じられる。また、Netflixで公開された、神山健治監督のアニメ『ULTRAMAN』でも、バトルアクションのみならず、俳優たちがキャラクターの演技を行うことで、より豊かな感情をキャラクターたちに与えている。
ここにおいて、俳優の仕事を奪うとされていたCG技術は、逆に演技者の可能性を広げ、容姿に縛られず演技力だけが求められるような環境まで生むことになったといえよう。「モーションキャプチャー」が可能にしたのは、生身の演技と、CGの世界との中間に立つ、半分実写、半分アニメーションという、人間と機械が手を結んだ新時代の表現である。
機械が人間の仕事を奪う……。労働者にとってそんな未来への暗い見通しが社会問題化しつつあるが、「モーションキャプチャー」のような取り組みがあるように、機械と人間の関係を模索することで、人間の新たな活躍の場が生まれてくるのではないだろうか。
■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter/映画批評サイト
■公開情報
『名探偵ピカチュウ』
公開日:5月3日(金)日本先行公開
監督:ロブ・レターマン
脚本:ロブ・レターマン、ニコール・パールマン
出演:ライアン・レイノルズ、ジャスティス・スミス、キャスリン・ニュートン、渡辺謙、ビル・ナイ、リタ・オラ スキ・ウォーターハウス
吹替え:竹内涼真(ティム役)、飯豊まりえ(ルーシー役)
公式サイト:meitantei-pikachu.jp
公式Twitter:@meitantei_pika
公式インスタグラム:meitantei_pikachu
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