MY FIRST STORY・Kid’z、『カジサックの部屋』出演 コラボ企画の狙いを考察
MY FIRST STORYのライブの客層は10~20代の若い世代が主で、これはYouTubeのメインターゲット層と一致する。おそらく今回の企画の目的は、広く知られることよりも深く知られること――言い換えると、ファンの年齢層自体を拡大させることではなく、従来のターゲットの中に属する非認知層・潜在層に認知されることだったのではないだろうか。
そんななか、“メンバーの飾らないキャラクターを伝える”という意味で今回のコラボは有効だったと考えられる。「NGなし」と豪語していたKid’zは、「ギリギリス」の格好を登場したカジサックに対し、青色の全身タイツを着用し、「イタギリス」に扮した。さらに肝心な対決に関しても大健闘。このゲームのことを「口の中の部屋を探すゲーム」だと語るプロ中のプロ・カジサックに食らいつき、結果、勝負は両者引き分けに終わった。身体を張ったKid’zの立ち振る舞いに親しみやすさを覚えた人もいたのではないだろうか。その際、芸人としてのキャリアによって培われたカジサックの安定したトークスキルも、重要な役割を果たしていたことを特筆しておきたい。
ミュージシャンのプロモーションといえば、リリース時期に取材に応じ、TV・雑誌・ウェブメディアに登場するパターンが主であるが、バラエティ番組のような温度感でYouTubeを利用したり、YouTuberと共演したりすることにより、これまでとは違った角度からのプロモーションを実施することができるようになるのかもしれない。そんな可能性を示唆するようなコラボだった。
■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。