デヴィッド・ボウイの大回顧展をARで堪能! 『DAVID BOWIE is』ARアプリが示す展覧会の未来

 筆者は寺田倉庫で開催されたオリジナルの展覧会も行ったのだが、大変混雑していた上に、とても数時間で味わい尽くせるようなボリュームではなく、その内容が素晴らしかったが故のフラストレーションを、正直なところ感じてしまった。が、このARアプリを使えば、あの時に見逃した展示物を心ゆくまで鑑賞でき、しかも何度もなんども繰り返し楽しめるのだ。会場で販売されていた図録も非常に美しく充実した内容だったが、本アプリは視覚や聴覚などをフルに使い、展覧会の「空気感」まで丸ごと楽しめる。まさにARならではといえよう。

 なお、本アプリでは1972年レインボー・シアターにおけるライブ映像、 1990年のサウンド&ビジョン・ツアー、 1989年ハーブ・リッツ撮影によるフォトセッションの映像など、会場では展示されなかったアプリ版独占コンテンツも60点以上用意されている。さらに、NYのブルックリン・ミュージアムのみで展示された「ラザルス」の台本、 生前ラスト・アルバム『★(Blackstar)』のミュージックビデオ制作のための、本人によるスケッチブックなど、日本初公開のコンテンツも収録されている。オリジナル展覧会に通い詰めた人にとっても新しい見どころ満載だ。

 このスマホARアプリは、「ヴァーチャル化プロジェクト」の第一弾としてリリースされたもので、今後、 VRフォーマットでのリリースも予定されているとのこと。オリジナル展覧会の雰囲気を、より深く「体感」出来るのであればそれも楽しみである。

 今回、この『DAVID BOWIE is』のARアプリを「体感」してみて思ったのは、美術館や博物館と非常に相性が良いということ。人気のあった展覧会や、世界の有名なミュージアムを今回のように「ヴァーチャル鑑賞」出来るARアプリが今後、開発されていくことを期待したい。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

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