中国発、次に来るサービスは? デリバリー&ピックアップ専門「Luckin Coffee」の魅力

深いブルーに白文字が目を引く、街頭の巨大広告

 その背景にあるのが、このコーヒーショップの最大の特徴ともいえるその運営システムだ。市場ニーズや若者の嗜好を見事にとらえ、いまどきの消費スタイルを確立している。

 この「Luckin Coffee」、実はできてから日が浅く、2018年5月に正式オープンしたばかりで、正式オープンしてまだ一年とたっていない。にもかかわらず、すでに全国21都市に約1400店舗展開(2018年10月現在)という驚異の出店スピードで、コーヒー業界をざわつかせた。

 具体的な利用方法は、というと、事前にモバイル(アプリ)で注文と決済をして、デリバリーか、店頭でのピックアップかを選ぶ。運営はいたってシンプルで、しかも店舗での接客対応がない。つまり、店舗に行っても、スタッフは基本的に接客してくれない。ひたすら、注文の入った商品をつくり、作業にとりかかっている。だから、実際に店舗に行っても、カウンターにあるQRコードをスキャンしてアプリで注文する。使い方がわかっていれば、スタッフと全くコミュニケーションせずに、指を動かすだけで全て完了する。

季節に合わせ、クリスマスブレンドジンジャーラテなどもある

 モバイル決済を使いこなしている若者からすると、「並ばずに飲めるコーヒー」「余計な会話がいらない」で、時間が有効に使えて便利だし、おしゃれだと人気になった。店舗も基本的にオフィスビルに近い位置に出店しているため、自らピックアップする人も少なくない。

カウンター左側にはピックアップを待つペーパーバックが並んでいる

 価格でみると、スターバックスのトールサイズラテが31元(約520円)で、「Luckin Coffee」は、同じサイズでも24元(約403元)とコストパフォーマンスも良い。

コーヒー以外のドリンクメニューもある

 もちろん、価格差以外にも、魅力なのが、これでもか!と続く割引サービス。まずモバイル注文&決済での最初の1杯は無料。ここまでは通常、他店でもしていると思うが、この「Luckin Coffee」のすごいところは、最初の1杯だけで割引サービスが終わっていないところだ。

 次々とこれでもかと、攻めてくる割引サービスがすごい! 友人に紹介すると1杯無料とか、不定期でさまざまなサービスの割引クーポンが付いてくる。そのうちのひとつが、「2杯注文でさらに1杯無料、5杯注文でさらに5杯無料」。店頭やアプリ画面で見かけるキャッチコピーだが、5杯分の金額で10杯買えるわけだ。

 「コーヒー飲む?」「じゃあ、まとめて注文しておくね」という会話がSNSアプリでの朝の挨拶がわりになっていたり、会議室でも鹿のブルーカップが定番となっていたりする。

 便利でコストパフォーマンスが良いことはこれで分かるが、コーヒーの味はどうか?というと、これも評価が高い。オフィシャルサイト上では、上質のアラビカ種のコーヒー豆使用で、イタリア、日本そして中国国内のWBC(ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ)チャンピオンによるブレンド、と紹介されている。

 味も悪くなく、手軽で便利なので、若者受けしているのもうなずける。その人気ぶりに「スタバ越えしているのでは?」との声があがるほどだ。

 朝の5分は昼夜の30分にも匹敵するほど貴重とよく言われるが、まさに出勤時の慌ただしさを考えると、並んでコーヒーを待つ時間を別のことに使えたら、それはそれでうれしい。

 例えば、バスや地下鉄など乗り物に乗りながら、あるいは何かしながら、ちょっとモバイル注文しておけば、会社の最寄り駅のコーヒーショップに立ち寄って、数秒ですぐに温かいコーヒーをピックアップして出勤、なんてことを考えると、とてもスマートで便利な気がする。

 ただただ、難点は、スマホアプリやモバイル決済を使いこなせないと「Luckin Coffee」は飲めない、という裏返しの不便さ。もちろん、目の前にカウンターがあって、スタッフがいても、アプリを操作しないと注文できないということを不便に感じるかどうかだが、現金NGなので、高齢者や外国人観光客にはハードルが高い。

 これは、「Luckin Coffee」のシステムに限らず、今ほとんどのサービスに、モバイル決済が使われているので、共通の課題ではあると思う。消費力の強い若者世代をのぞき、全体として考えた場合、「キャッシュレス社会化は便利か否か?」は常に考えさせられるテーマでもある。

 とはいえ、明確に他社と差別化したサービスを打ち出している「Luckin Coffee」。中国はスピード社会とよくいわれるが、人気やブームが去るのもはやい。これからどう成長していくか、「ブルー旋風」の行く末が楽しみでもある。

■フライメディア
株式会社フライメディアは映像制作を中心に、海外、主に中国、台湾、香港のリサーチ、撮影コーディネーションサービスを提供中。現地情報を詳細に解説している。
https://flymedia.co.jp/

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