最新 VR技術を用いて「モナ・リザ」が動く!? 音楽×テクノロジーの祭典『MUTEK.JP 2018』レポート
VR空間に現れるキューブの内部に入り込む 『I\I I I\I IE feat. FAMM’IN』
筆者が体験したもう一つの展示は、エイベックス社員による匿名の“ファントム組織”〈2nd Function〉とKDDIのコラボレーションによるARコンテンツ『I\I I I\I IE feat. FAMM’IN』だ。
2nd Functionは今まで多くの世界的なイベントでテクノロジー企業やブランドとコラボレーションし、メディアアートを発表してきたクリエイティヴ・レーベル。この夏には、初となる大規模な個展『ADIRECTOR』を開催し、高い評価を得たばかりだ。また、今回の音楽を手がけたのはFAKY、FEMM、Yup’inの三人からなるフィメール・ラップ・クルーのFAMM’INである。
「9」という数字にこだわったVR空間
『I\I I I\I IE feat. FAMM’IN』は確実性のない曖昧な世界で「自分の小さな世界の外」を想像し、多くの視点を持つ事と、限りあるスペースを物理的にも心理的にもシェアする体験・変化を恐れない心の2つをコンセプトにしたARコンテンツである。
展示ではスタッフに案内され、白いカーテンをくぐると小さな部屋に9つに区切られた白線が。その上に、約5メートル四方の仮装空間が広がるらしい。真っ白な椅子に座りVRゴーグルを装着すると、案内役に椅子ごと押される形でキューブ内を進んでいき、9分の間、前後左右上下に現れる9名の主要キャラクターによるパフォーマンスが繰り広げられる。今回の作品は前後左右だけでなく、天井や足元にもコンテンツが散りばめられ、意図的に一度の体験では全容が把握できない「つくり」になっていた。
「白」をベースに美しくも少し不気味なVR空間が目の前に広がり、スタッフの方が人力で椅子を動かすといったデジタルとアナログの融合がとても躍動感のある体験を作り出していたし、FAMM’INによる音楽も仮想空間の神秘性にマッチしていた。
様々な形で継続的に『I\I I I\I IE feat. FAMM’IN』としてARコンテンツを発表していくという2nd Functionの今後の展開は要チェックだ。
他にも、脇田玲のデジタルアート作品をパナソニックの住空間ディスプレイ「AMP -Ambient Media Player-」に映し出した展示、Ableton主催のレクチャーやデジタルクリエイティブ業界の「多様性」に焦点を当てたシンポジウム「Digi Lab」、日本科学未来館以外にも渋谷WWW、WWWX、代官山UNITなどでのライブパフォーマンスなど、複数会場で展示やイベントが同時並行に行われていた。
MUTEKはアーティスト、観客共に国際的であることが非常に印象的であり、多くの来場客で賑わっていた。来年のMUTEKにもさらなる「多様化」と盛り上がりを期待したい。
(取材・文=かぷぬ)