モデラーたちの夢が叶う? 自動車作り体験VRゲーム『Wrench』に漂う希望

 逆にいうと、単にプラモデルを作る分にはそれで別に困らないのである。しかし、自分で車を分解してもう一回組み立てたりするようなモデラーも世の中には存在する。そしてそういう人が組んだ模型を見ると、説得力というか、存在感というか、雰囲気というか、そういう言語化しにくい部分がなんとなく違うのだ。「どの部分がどういう素材でできていて、どう汚れるか」というのを正確に把握している人の模型は、やっぱりかっこいい。あれは憧れる。おれもああなりたい。しかし車と名のつく乗り物は自転車程度しか持ってない人間には、やはりハードルが高い。

 まだ発売前のゲームにこんなことを言うのも変だが、『Wrench』があればおれのような物臭な人間でも、プラモデルを作るのに多少助けになるような知見をゲットすることができるのではないか。このゲームには「もしかしたらこれをプレイすると知識が増えて、プラモデルを作るのも多少うまくなるのではないか」という希望が漂っている。しかもVRだから自宅から一歩も出なくていい。ていうか、おれがVRでやりたいのは、美少女になったりYouTubeでゲームを実況したり……というのではなくて、思うがままにエンジンや車や飛行機や鉄砲をバラバラにしたり組み立てたりするやつだったというのを再確認した気分である。やっぱ美少女より内燃機関だよ!

 というわけなので、Missing Digitには追加コンテンツとして是非とも「1976年の俊作会長自宅ガレージで、ポルシェ911を部品ひとつひとつに至るまでバラバラに分解できる」という"俊作会長体験クエスト"を出してほしい。……まあ、そこまでやるのは無理だろうけど、なんにせよエンジンのついている乗り物のプラモデルを作る人間は、今からVR用のゴーグル購入を検討してもよさそうだ。

■しげる
ライター。岐阜県出身。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

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