シンカリオン×エヴァンゲリオン、コラボが示した希望ーーロボアニメ23年目の邂逅を読む

シンカリオン×エヴァ、コラボの意味

 先日放送された、『新幹線変形ロボ シンカリオン』の『新世紀エヴァンゲリオン』とのコラボ回。すでにネットでも大いに話題になっているこの31話『発進!! シンカリオン 500 TYPE EVA』は、かつて他者との関係を全て絶って引きこもったシンジくんたちへの、鮮やかな返歌だった。

 『シンカリオン』は根回しで完成しているアニメである。「全国各地の新幹線が変形し、ロボットになって戦う」というストーリーを成立させるためにどのような手続きが必要か、おれには想像もつかない。なんせ各地のJRに話を通し、企画の趣旨を理解してもらい、PRに協力してもらう必要もある。ジェイアール東日本企画と小学館集英社プロダクション、タカラトミーの3社によって2015年には企画とトイ自体は存在していたにも関わらず、アニメ放送まで3年を要したというあたりに、いろいろなものがにじんでいるように思う。

 ガジェット的な面で言えば、前述のように『シンカリオン』はアニメよりトイが先行したという点で、タカラトミーらしい作品である。当初の企画はJR東日本グループに属するジェイアール東日本企画と小学館集英社プロダクションから成るProject E5が立てたものだったが、タカラトミーが参画したことで「プラレールが変形する」ことが前提となった。変形玩具といえばトランスフォーマーなどに代表されるようにタカラのお家芸だが、シンカリオンの玩具はプラレールがベースとなっているためトミー的な質実剛健な変形方法となっている。トミー系の商品かつトイが先行して発売され、のちにアニメ化されたという点ではトミカハイパーシリーズと同じプロセスで成立した作品であると言えるだろう。

 前述のような"根回し力"によって、『シンカリオン』は他社のキャラクターを躊躇なく劇中に登場させる。わかりやすいところだと初音ミクを元にしたシンカリオンの運転士"発音ミク"である。正直このキャラがしばらく前の人気投票で一位になった時は「つまんねえ……他社IPに踊らされやがって……! オタクはタカラトミーに謝れ……!」と思ったものだが(おれは三島ヒビキさんに投票した)、話題になったのは事実。なんせ元々発音ミクが出ているアニメである。エヴァンゲリオンとのコラボ回が放送されたのも、そこまで意外というわけではない。「やり手だな~!」という感じだ。

 で、31話である。もう冒頭の各話タイトルが出るところから特別仕様で、エヴァのあのフォントが使われている。三島で新幹線の写真を撮っていた主人公の速杉ハヤトの前に運行を終了したはずの新幹線「500 TYPE EVA」が現れ、それを追いかけていったハヤトは第三新東京市という見慣れない都市に迷い込む。そこで新幹線と同じ名前を名乗る洞木三姉妹に連れられて駅に向かうハヤトの前に巨大怪物体が現れて……というストーリーだ。


 元々、アニメ版シンカリオンはエヴァンゲリオンに似ていると指摘されていた。次々に現れる謎の敵と、それに対抗する人類側の秘密組織。父親に促されて巨大なロボットに搭乗する少年たち。しかし、シンカリオンでの大人と子供の関係は、エヴァと比べると相当まともである。大人たちは適性のある小学生を最前線で戦わせることに当初から疑問を持ち、悩み、ハヤトの父であるホクトは自分も最前線で戦えるように新たなシンカリオンを開発する。また、主人公のハヤトは「お父さんの役に立ちたい」という気持ちから戦いに参加する。大人と子供が互いを気遣って相互にフォローしあいつつ、テクノロジーとロジックとインフラを武器にして困難に立ち向かう姿は、(やや優等生っぽすぎる感もあるものの)2018年の子供向けアニメとしては真っ当なものであると思う。

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