『eGG』に『YUBIWAZA』 eスポーツムーブメントで変化する“ゲーム番組”総まとめ

eスポーツに特化した地上波ゲーム番組

 そんななか、2018年の上半期において、従来のゲーム番組と着眼点の違う2つのeスポーツ番組が誕生した。制作局は異なるがどちらも地上波放送で、eスポーツやゲーム作品の「競技性」に着目している。

 まず関西圏で4月12日より始まった『YUBIWAZA』(MBS)は、地域に密着しながらeスポーツシーンのリアルな様子を伝える関西ローカル番組だ。お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号&2号」の田村淳と、モーニング娘の元メンバーでゲーム関連コラムを『ファミ通』で連載していた矢口真里がMCを務め、毎週、eスポーツに関わる題材で特集が組まれている。6月7日放送回では、格闘ゲームイベント『KVO』とTBSが合同で開催した『KSB2018』の模様を大々的に取り上げ、大会出場者をスタジオに招いてトークが繰り広げられた。7月26日放送の最新回では対戦格闘ゲームの歴史にも触れるなど、eスポーツ全般の情報発信に力を入れている。eスポーツを全く知らない視聴者が雰囲気を掴むための入門番組として、またeスポーツ界隈で活動するユーザーがその盛り上がりを再確認する番組として、機能しそうだ。

 続いて7月19日にスタートしたのは、歌手でタレントのDAIGOや元乃木坂46の生駒里奈がメインMCを担当する『eGG』(日本テレビ)。各ゲーム作品の内容やeスポーツシーンの解説役として、eスポーツキャスターの岸大河も出演している。第1回放送では、人気バトルロワイヤルゲーム『PLAYERUKNOWUN'S BATTLEGROUNDS』(PUBG)に番組MC2人が初挑戦。またプロゲーミングチーム「野良連合」メンバーによる高度なゲームテクニックも披露された。

 eスポーツ分野の最新情報を紹介したり、プロゲーマーの生活を報じたりと、番組構成は『YUBIWAZA』と共通する部分もある。しかし驚くべきは、日本テレビは自社傘下のアックスエンターテインメント株式会社を通して、eスポーツチーム「AXIZ」を立ち上げた点だろう。AXIZは「eスポーツシーンにおける軸・中心的な存在」をコンセプトに捉えるチームで、現時点ではデジタルカードゲーム『シャドウバース』のプロリーグで活動する模様。さらにAXIZに所属する選手らは、メディアへの出演を通してeスポーツにまつわるプロモーション活動も担当する。インパクト十分の取り組みで、今後のeスポーツ事業振興に各方面で大きく寄与するものと考えられる。

 日本におけるeスポーツムーブメントはようやく盛り上がりを見せてきたが、アメリカや韓国と比較して、まだまだ発展途上だ。地上波でレギュラー放送されるゲーム番組がどれだけ関心を集め、一般層にeスポーツを広げるものとして機能するかーーそのことが、今後のシーンにおいて大きなポイントになっていくかもしれない。

■龍田 優貴
ゲームの尻を追いかけまわすフリーライター。時代やテクノロジーと共に移り変わるゲームカルチャーに目が無い好事家。『アプリゲット』『財経新聞』などで執筆。
個人的なオールタイムベストゲームは「ファミコン探偵倶楽部」シリーズ。
Twitter:@yuki_365bit

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