プラモ愛好者が驚愕した『Nintendo Labo』の“説明”ーー「わからないとは言わせない」任天堂の気迫

あらゆる「説明」が『Nintendo Labo』と比較される?

 考えてみれば、ゲーム業界ほど「説明」という行為に向き合い、発展させ続けてきた業界はない。今やどのゲームにも紙の説明書なんかついていない。ゲームを起動すればチュートリアルがあり、そこで世界観やストーリーの前提を説明しつつプレーヤーに操作も覚えこませる。ゲーム業界の人々は、そんな複雑なことを何年も何年も考え、実行し続けてきたのだ。そのノウハウを「実際に手で物を組み立てる」ということを説明するのに惜しみなく注ぎ込んだ結果が、『Nintendo Labo』なのだろう。

 おれが恐れていたのはこれだった。要は、この先は世の中全ての説明という説明に「『Nintendo Labo』と比べてわかりやすいか否か」という評価基準が持ち込まれ得るのである。何もプラモデルに限った話ではない。企画を発表する際のプレゼンや、雑誌の誌面、家具の組み立てや家電製品の扱い方、簡単な自己紹介からSNSのアカウント作成方法などなどなど、この世には説明が溢れている。それら全てが、『Nintendo Labo』と比較できるようになってしまったのである。おれが書いているこの原稿だってそうだ。あんな「懇切丁寧」の化け物みたいなコンテンツと比較されたら、誰だって尻込みすると思う。特にエンターテイメント産業やホビー産業は直接『Nintendo Labo』と競合するので、危機感を持った関係者もいることだろう。

 そんな恐怖感にアテられたのが、おれが『Nintendo Labo』の続きを作れないでいる理由だ。もうこれ以上怖い思いをしたくないし、自分が好きで続けてきたプラモデルという遊びが、実はユーザーの上にあぐらをかいて成立していたという事実を見たくない。しかし、逃げ回ってもいられないので、今日あたり「おうち」か「バイク」に着手しようと思う。ああ、本当に怖いなあ……。

■しげる
ライター。岐阜県出身。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

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