コーチェラ、トゥモローランドーーチケットを受け取った瞬間に始まる、海外フェスのイベント体験

グリコのおまけ感のあるUltra Music Festivalのチケット

Ultra Music Festival 2018 20th year anniversary ticket unboxing!

 2018年に6大陸、23カ国への進出を果たし、フランチャイズ化が最も成功しているUltra Music FestivalのチケットBOXは、上記に比べればやや控えめかもしれない。缶に同封されているのは、タトゥーシールとワッペン、ピンバッジなど。Ultra Music Festival 2018は20周年記念であるため「TWENTY YEARS ANNIVERSARY」と描かれている。

 チケット自体も凝っていて、見る角度によって柄が変わるレンチキュラー印刷が施されている。手で動かして角度を変えると、上演中の巨大ディスプレイに表示されるサイケデリックなビジュアルのように見える。一つひとつは、ささやかなものだが、手にすることでグリコのおまけを開封する時のような楽しさを感じるだろう。

 これは日本のフェスでも導入できるやり方かもしれない。CoachellaやTomorrowlandは、その規模の大きさゆえにプロモーションや来場者ケアにそれなり以上の予算を投じることができるが、日本で同じことをするのは現時点では難しいだろう。だが、ファンのロイヤリティ向上とソーシャル対策として、チケットのアンボックス体験をデザインすることはフェスの客層を広げるためにも有効だ。そして、このような可愛らしいオマケは、いかにも日本人好みに思える。

 2000年代初頭まで、フェスや音楽イベントのチケットといえば、発売時刻になれば電話機にはりついて何度も電話をかけて予約をし、無事取れたら郵送で送られてくるものであった。そして、オンラインやコンビニエンスストアでも支払や発券ができるようになり、今や手軽な電子チケットもすっかり普及する時代となった。今回紹介した事例は、そういう意味では時代に逆行しているかに思える。だが、時代はさらに一周回り、フェスのチケットは入場券としてのみならず、ファンにとってより愛着の持てるイベント体験をデザインするツールとしての役割を持つようになったのかもしれない。

■高橋ミレイ
編集者。ギズモード・ジャパン編集部を経て、2016年10月からフリーランスに。デジタルカルチャーメディア『FUZE』創設メンバー。テクノロジー、サイエンス、ゲーム、現代アートなどの分野を横断的に取材・執筆する。関心領域は科学史、哲学、民俗学など。

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