『聖闘士星矢』『バキ』などビッグタイトル続々 動画配信サービスは“アニメ戦国時代”へ
ここ数年、動画配信サービスの利用者数が増加傾向にあるという。ICT総研が調査したところによると、2017年末の総利用者数は1,440万人で、このうち定額制サービスの利用者は1,190万人ほどにのぼる。スマホやタブレットが普及したこと、時間や場所を選ばずに視聴できる利便性が背景にあると考えられるが、一定層においては確実にTV視聴に代わる娯楽となってきていることは間違いない。そしてサービスがある程度根付いた先にあるのは、いかに魅力的なコンテンツを提供し、より多くの利用者を獲得するか。各社ともそれぞれの強みを活かした戦略立てに余念がない中、一際激しいしのぎの削りあいが繰り広げられているのがアニメコンテンツだ。
2016年、アニメ産業の市場規模は初めて2兆円を突破した(一般社団法人日本動画協会調べ)。要因としては映画(前年比141.1%)、海外(前年比131.6%)、ライブ分野の成長(前年比129.5%)が大きいとのことだが、映像配信分野も10%前後の伸び率を示し、売上高としては478億円を計上。今後ますます成長していくのは目に見えている。そこで利用層の拡大とプログラムのテコ入れのため、各社が取り組み始めたのがオリジナルアニメ。今やそうして製作された作品がひとつのシーンを形成しつつある。
例えばNetflixは永井豪原作の『デビルマン』を、映画『夜は短し歩けよ乙女』などで知られる湯浅政明監督を迎えてアニメ化した『DEVILMAN crybaby』を配信し、大いに話題をさらった。今後も『Knights of the Zodiac: 聖闘士星矢(仮)』、『バキ』など、人気コミックのアニメ化が控えるほか、Production I.G制作のオリジナル作品『B:the Beginning』、ボンズ製作のSFアクション『A.I.C.O. Incarnation』の配信もはじまり勢いに乗る。
また、Huluは2016年に『ピッグ - 丘の上のダム・キーパー』でオリジナルアニメ事業に参入。その後、注目の若手クリエイター・櫻木優平を起用した『ソウタイセカイ』や、『東のエデン』『攻殻機動隊 S.A.C.』の神山健治が原作・脚本・監督を務めた映画『ひるね姫~知らないワタシの物語~』のスピンオフ『エンシェンと魔法のタブレット』など配信してきた。今のところ新作の話題は聞こえてこないが、強みでもある日テレとのコラボがアニメでも発揮されることに期待したい。
一方、AbemaTVとdTVは、昨年、共同で『楽園追放 Expelled From Paradise』『機動戦士ガンダム00』の水島精二が総監督を務めたオリジナルアニメ『エスカクロン』を配信。AbemaTVはこの春からアニメチャンネルを3チャンネルに拡大したほか、dtvも強固なドコモユーザーの基盤を武器に利用者数を拡大しているとあって2社のタッグは外資系サービスの脅威となりうることだろう。
そしてAmazonプライムビデオは、早くから人気アニメ『クレヨンしんちゃん』の外伝を制作してきた経緯がある。加えてTVシリーズの独占配信も数多く手がけており、アニメ市場への参画には積極的。国内利用者数ではダントツトップを走るだけに、今後もし新たなオリジナルアニメが発表されるとしたら業界を揺るがす一大事となるのは明らかだ。
このほか、バンダイナムコは視聴者参加型の動画配信サービス「&CAST!!!(アンドキャスト)」を始動。ソシャゲとアニメコンテンツを融合したような斬新な仕組みで、独自のコンテンツ作りに挑む。4月1日開始の「Paravi」はTBS、テレ東、WOWOWなどメディアの雄が結集した新サービス。このメンツを見れば今後オリジナルアニメの製作に乗り出すのも十分考えられる。