小関裕太「僕のライブ人生が始まる」 初の音楽ライブ『ULTERIUS』レポート&インタビュー

小関裕太の初ライブ『ULTERIUS』が10月4日に品川インターシティーホールで開催された。
タイトルの『ULTERIUS』とは、「この先」「これ以上」「さらに前へ」などを意味するラテン語の言葉。これまでも20歳のタイミングで長編映画『Drawing Days』の主演と企画を務めるなど、“ものづくり”をライフワークにしてきた小関が「好きだからこそ手を出すのが怖かった」という音楽への向き合いに踏み出したのが今回の音楽イベントだ。本記事では、正真正銘の初めての音楽ライブとなった1公演目をレポートする。
ライブの大きな軸になっているのは、ジャズ。中学生でジャズに出会い、大人になってからはジャズハウスでディナーを嗜むことを覚えた小関は、ジャズを知らない人にも届いてほしい、触れてほしいという思いから今回のライブが動き出している。絨毯に、アンティーク調の木製家具、ブラウン管テレビなど、ラグジュアリーな雰囲気のステージに、バンドメンバー、そして小関が姿を見せる。
まず披露されたのは「Fly Me To The Moon」(Bart Howard)、「New York State of Mind」(Billy Joel)の2曲。前者はジャズのスタンダードナンバーであり、アニメやドラマなど様々な作品でカバーされている誰もが知るポピュラーな音楽でもある。小関がフロアにアンケートを募った際、ジャズを普段から毎日聴いてるというファンもいれば、聴いたことのないというファンの手も多く上がっていた。1曲目の「Fly Me To The Moon」で会場に漂っていた緊張感は正直な気持ちの表れだったのかもしれないが、それが徐々に解けていくのを感じたのが「New York State of Mind」からだった。音に身を任せ、ジャズのリズムと歌声に酔いしれる――小関もBilly Joelという自身のルーツにあるアーティストの楽曲、そして何よりジャズの魅力を目の前にいるファンに届けられることが幸せそうでならない。誰よりもライブを楽しんでいる小関は身体を揺らし、特にサックスとのグルーヴが生まれると、「イェイ!」という歓喜の声も飛び出していた。

続いては、過去に小関が参加した作品の印象的なシーンを朗読とジャズ特有のセッションを融合させた実験的なセクションだ。それぞれの印象的なシーンを朗読していくのだが、小関はセリフの内容よりも音の響きとバンドのリズム、唱える音に重きを置いている。前衛的なフリージャズに不穏な空気が漂ったり、温かなピアノの音色に世界がカラフルに色づき始める。小関の作品ごとの声色や朗読のスピードも様々で、時に気高く、威風堂々と、また高貴で弾むように朗読をしたかと思うと、今度は低く押し殺したような声で、作品の役になりきっていく。それは紛れもなくジャズセッションという、音楽表現だった。同時に小関と同じ景色を見てきたファンであれば、思い出が鮮明に蘇る作品の旅に出かけることもできる。

小関の誘う作品の旅はまだまだ終わらない。過去のミュージカル3作品の楽曲をジャズアレンジで披露していく。数ある中で選曲されたのは、『The View Upstairs』より「今日の出来事~What I Did Today~」、『レッドブック』からレッドブックメドレー、ミュージカル『DNA -SHARAKU』より「落書きする男・連の筆」の3曲。レッドブックメドレーでは「紳士の流儀」「愛は天気のように」「あなたもそう」「愛は天気のように(リプライズ)」の5曲にジャズスパイスをふりかけ、時折スウィングする場面もありながら、まだ記憶に新しい初夏の『レッドブック』の世界観を体現していく。特筆すべきは「落書きする男・連の筆」だろう。『DNA-SHARAKU』は、2016年に小関がナオト・インティライミとダブル主演を務めたミュージカルで、当時成人を迎えたばかりの小関がソロで歌った思い入れの強い楽曲だ。涙するファンの姿を見て、小関自身も当時の思い出が溢れ出していく。10年という時を越え、当時の景色を映し出しながら、今の成長した姿、新たな解釈、表現で「落書きする男・連の筆」を歌う小関のパフォーマンスが素晴らしかった。

小関のお茶目な部分が顔を出したグッズ紹介や小関が客席に降りてのプレゼントコーナーなどがありながら、ライブのラストに披露したのが小関にとっての数少ないオリジナル曲「ぜんぶ、うそ」だった。工藤秀平(Play.Goose)とともに2020年のコロナ禍に制作され、2023年にフルバージョンが完成した「ぜんぶ、うそ」。今までも小関のイベントで歌われていたりとファンにはお馴染みの楽曲であるが、歌い出しは小関がアコースティックギターを演奏する、ジャズセッションが要素として加えられている。小関の伸びやかなロングトーンに改めて驚かされると同時に、〈君の声と僕の声が/重なり合ったように/“ぜんぶ、ほんと”にしよう〉という歌詞が、初の音楽ライブというステージで新たな響きをもたらしているように思えてならなかった。ライブが始まった時のあの緊張感がまるでうそだったように、手拍子と歌声が会場にはこだましていた。

既報の通りに、2027年1月に大阪、横浜にて『小関裕太 “ULTERIUS”-Billboard Live』の開催が発表された。場所は小関の憧れのジャズハウス、Billboard Live。ライブタイトルに掲げられているように『ULTERIUS』の魂は継承しつつ、さらなるブラッシュアップをしていくと小関はファンに約束する。筆者はライブ終わりの小関にインタビューをする機会を得ることができた。そこでは今回のライブを終えての感想や内容の振り返り、Billboard Liveでの公演に向けた思いについても聞くことができた。「僕のライブ人生が始まる」という言葉とともに、あくまで役者、その糧になればいいという考え方が印象的だ。全てはワクワクを原動力に、小関の『ULTERIUS』は続いていく。
※写真は2公演目のもの




















