『風、薫る』“シマケン”佐野晶哉は途中退場する? 朝ドラ終盤に訪れる“死”を考える
『風、薫る』のシマケンはこれまでの朝ドラのパターンに当てはめていいものだろうか。もちろん長く登場してきた、主人公・りんにとってひじょうに重要な人物ではあった。
シマケンこと島田健次郎は第11回から登場した。ちょっと変わった人物で、新聞社の活字工をやりながら小説家を目指している。早くからりんに好意を持っていたが、りんが仕事と子育てでいっぱいいっぱいなため思いが実らないまま月日が経っていった。演じているのが人気の高い佐野晶哉ということもあって、通常であればりんの相手役であろうと想像するのだが、ややストーカー的な言動も伴って、もしかして相手役は別にいるのではないかというミスリード的なところもあった。
幼なじみの虎太郎(小林虎之介)がしぶとくりんを思い続け、ジャーナリストの横沢(井上祐貴)は積極的にプロポーズするなど、ほかの可能性もチラつかせながら、もしやこのままこのドラマでは主人公が誰とも恋することない物語になるのかと思ったとき、ようやくりんとシマケンの思いが通じ合う。
ところが運命のいたずらで、シマケンは実家に帰ることになる。お互い、思いがありながら別れて、何年も経ったところで、シマケンが東京に戻ってきた。再会したふたりだが、これでよかったのだというような穏やかな関わり。
このあとシマケンが胃がんで手術し、退院後の自宅療養の看護をりんが受け持つことになる。身内や親しい人の看護はメンタル的にしんどいものがあり、それすらも乗り越えるのが看護婦なのだという事実は、直美(上坂樹里)の母・文(内田慈)の看護体験と合わせて、りんもシマケンでぶち当たることになった。
途中、シマケンの容態が悪化し、りんが懸命に看病する。そのとき、思わず互いの激しい本音が漏れる。
「なんで? 来てほしかった。一緒につれていきたかった。離れたくなかった」「なんでは私のほうです。なんで言ってくれなかったんですか? 言ってくれたら。言葉が足りないよ、シマケンさんはいつも。いろんな言葉を知ってるはずなのに。大事なことはちっとも。なのにいま。ずるい」
嵐が過ぎ去ったように、シマケンがなんとか持ち直したのが第125回で、残るはあと5話。シマケンはこのまま回復するのか。シマケンとの関係に決着はつくのか。見ざるを得ない続き方。そこに、日本の看護の黎明期の先頭に立っていた人物としての、仕事人としての結末はどうつけるのか。
身内や親しい人の看護が、りんの看護婦人生の最大の難所で、シマケンは、その重要な役割を託されたのだろうか。それとも最終週ではまだほかに難関が描かれるのだろうか。ほんとうにもうあと5回しかない。だが序盤からかなりの突風に煽られるように進んできた『風、薫る』なので、5話のなかにぎゅぎゅっと詰め込むことも可能であろう。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK