『さよならノワール』“鴨居”岡山天音が見せた素顔 Pink Floyd「Time」が20年に重なる
これまで鴨居を演じてきた岡山天音といえば、力の抜けた佇まいや独特の間で、どこかつかみどころのない人物にも自然と愛嬌を持たせる俳優だ。NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(2025年)では恋川春町、『キングダム』シリーズ(2019年〜2026年)では尾平を演じ、NHK夜ドラ『ひらやすみ』(2025年)では主人公・生田ヒロト役でNHK連続ドラマ初主演。2026年には同作で第52回放送文化基金賞の演技賞も受賞した。『さよならノワール』でも、遠回しな皮肉や唐突な音楽の話を織り交ぜる鴨居を飄々と演じてきたからこそ、第9話でその余裕が消えていく様子には目を奪われる。
熊沢を追い、かつて彼の祖父が暮らしていた空き家へ向かった鴨居。誰もいない部屋で体育座りをしながら妹との記憶を思い返す姿は、刑事というより13歳の兄に戻ってしまったかのようだ。
そこへ現れた熊沢に「本当に殺す気はなかったのか?」と涙を浮かべながら問いかける鴨居に、いつもの飄々とした面影はない。声を荒らげるというより、20年間押し込めてきた怒りや悲しみが抑えきれずにあふれ出していく。岡山の表情や声の震えからも、妹を失った時間が鴨居の中では決して過去になっていなかったことが伝わってきた。
熊沢は謝罪した直後に態度を豹変させ、鴨居に襲いかかるが、駆けつけた警察によって確保される。熊沢が連行されたあと、その場に残った鴨居に向き合ったのは絵梨子だった。「私には鴨居さんの気持ちはわからない」。分かったつもりになるのではなく、だからこそ知りたいと、妹との思い出を尋ねる。そこで鴨居は、熊沢への復讐を考えていたこと、そして警察官になったのも、少年法によって実名が伏せられていた熊沢の正体を突き止めるためだったことを明かす。
そんな鴨居に絵梨子は、「復讐を果たせなくて心底良かったと思います」と伝える。くだらない音楽の話も、遠回しの皮肉も、もう聞けなくなるのは寂しい。そう続けたうえで、最後にかけたのが「鴨居さんはいいお兄ちゃんです」という言葉だった。復讐を果たせなかった自分を責めるのではなく、20年間ずっと妹を思い続けてきたことそのものを肯定するような一言。それは絵梨子だからこそ届く言葉だったのだろう。
20年間抱え続けてきた思いを初めて言葉にしたことで、鴨居も少しずつ過去との向き合い方を変えていくことになるのかもしれない。復讐のために警察官になった彼が、これから何のためにこの仕事を続けていくのか。そして、今回そばにいた絵梨子との関係にもどんな変化が生まれるのか。
■放送情報
『さよならノワール』
フジテレビ系にて、週火曜21:00〜21:54放送
出演:小池栄子、北香那、岡山天音、荒川良々、味方良介、濱尾ノリタカ、利重剛、眞島秀和、岡部たかし、浅野和之、戸田恵子、渡部篤郎ほか
脚本:井上由美子
演出:河毛俊作、清矢明子、柳沢凌介
音楽:菊地成孔
主題歌:chilldspot「ドラマ」(RECA Records)
衣装:伊賀大介
心理監修:石橋昭良(臨床心理士/非行臨床研究所)
警察監修:石坂隆昌(ユヌ・ファクトリー)
プロデュース:狩野雄太(スタジオ戦略本部 第1スタジオ ドラマ・映画制作センター)
制作プロデューサー:清家優輝、岸川正史(ファインエンターテイメント)
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/
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