『ブルーロック』“イガグリ役”青木柚が妙演 ムードメーカーとして光る“引き算”の演技
注目と期待を集める若手俳優たちが勢揃いした映画作品が、折あるごとに日本の劇場を沸かしている。令和に登場した作品でいえば、『東京リベンジャーズ』シリーズ(2021年、2023年)はもちろん、昨年は『WIND BREAKER ウィンドブレイカー』(2025年)があった。そしてこれらの系譜に連なる新たな作品として、『ブルーロック』が封切られ、多くのエンターテインメントファンの胸をアツくさせているところである。ここでは、そんな作品の成立に欠かすことのできない若手俳優のうち、青木柚という才能にフォーカスしてみたい。
本作は、サッカーをモチーフにした青春映画である──というのは間違いではないが、正しくもない。「サッカー」という人気スポーツをモチーフにしているのはたしかだが、これは“フォワード”のポジションばかりに焦点を当てている。日本サッカーに足りないのは“エゴ”であるという考えのもと、「青い監獄(ブルーロック)」に全国の高校生フォワードたちが招集されたところから、この物語ははじまる。ワールドカップで日本を優勝に導く、革命的なストライカーを見つけ出し、育成するためだ。青木が演じる五十嵐栗夢も、そんな“才能の原石”のひとりである。
いわば本作は、サッカーをモチーフにしたデスマッチを描くもの。真のストライカーとして選ばれるのはたったひとりで、それ以外の者たちはアスリート人生を続けていくことすらままならないのだから、デスゲームだともいえるだろう。誰もが自身の選手生命をかけて、この闘いに挑んでいる。そのような物語において青木が扮する栗夢は、ひときわ目立つキャラクターだ。おしゃべりでお調子者の彼は、個性派揃いの集団の中でもとりわけ目立つ。シリアスな瞬間が何度も訪れる本作においてムードメーカー、主人公・潔世一(高橋文哉)が身を置く「チームZ」の中で、チーム最大の三枚目だ。
このポジションに青木が配されていることに、多くの観客が膝を打つことになったのではないだろうか。それは彼が初登場を果たした場面でのこと。「チームZ」の顔合わせのシーンにて、ささやかで愉快な、それでいて心を掴まれる瞬間がやってきた。
本作に集った若手俳優たちの誰もが、そのギラついた佇まいだけで“エゴ”を体現してみせ、力の入った言動の一つひとつでこれを加熱させる。誰もが自身のエゴイスティックさを示すように、個々の役の設定のみならず自己主張しては前に出る。それは“青木柚=五十嵐栗夢”も同じ。いやむしろ、自己主張の度合いにおいては“彼ら”こそがナンバーワンかもしれない。
登場するなり、栗夢はぺらぺらとしゃべり続ける。しかしほかの者たちと比べ、青木の演技は肩の力の抜けたものだ。とめどなくセリフを繰り出すのだが、それは決して芝居がかったフィクショナルなものではなく、あくまでも栗夢にとって日常のひとコマといった印象。特殊な世界観の中であっても、彼だけはどこまでも等身大だ。だからこそ、この親しみやすい栗夢の存在は、私たちと『ブルーロック』の世界との架け橋としても機能している。