『キングダム 魂の決戦』『しびれ』で注目 榎本司が明かす、芝居への思いと吉沢亮への憧れ
子役からキャリアをスタートし、映画『キングダム 魂の決戦』で趙の将軍・万極の少年期役を演じた榎本司。9月公開の映画『しびれ』では、暴君のような父の影響で声を失った青年という難役に挑むなど、着実に経験を重ねている。
春には高校生になり、新たな出会いに刺激を受ける日々。芝居との向き合い方にも変化が生まれたという彼に、今の素直な思いを聞いた。
『アキラとあきら』で芽生えた俳優としての自覚
――俳優を目指したきっかけから聞かせてください。
榎本司(以下、榎本):5歳の頃に、お父さんがアミューズのオーディションに応募したんです。僕は当時の記憶がまったくないので、後からお父さんに「応募した」と教えてもらいました。
――もともとエンタメが好きだったり、目立ちたがり屋な一面があったんですか?
榎本:そういうわけでもなくて……きっと、お父さんにも深い理由はないと思うんですよね(笑)。
――まさに、「気づいたらこの世界にいた」という感覚なんですね。
榎本:最初は雑誌『小学一年生』(小学館)のモデルをやっていて、いろいろな場所で撮影したのをなんとなく覚えています。キッザニアとか、海とか、とにかく楽しい撮影ばかりで。それまでやったことのないこともたくさんできたので、すごく楽しかったです。
――そこから、明確に「仕事なんだ」と意識が変わったタイミングはどこだったのでしょう?
榎本:あまり「これ!」というポイントはないんです。ただ、小学5年生の頃に『アキラとあきら』という映画で、竹内涼真さん演じる主人公の幼少期役をやらせていただいて。現場の雰囲気だったり、完成した作品を観たりする中で、自分が“大事なもの”に携わっていることを自覚して、そこからちょっとずつ気持ちが変わっていったような気がします。
――大きな役を任されたことで、俳優としての責任感も芽生えますよね。
榎本:最初は「やって」と言われたことをやっていましたけど、最近は「ここをこうしよう」「こうしたら面白いんじゃないかな」と考えるようになってきました。たぶん、お芝居がより好きになってきたんじゃないかなと思います。演じる役を深掘りしていくのも楽しいし、深掘りしたことで、その人の人生が面白いものになったりする。楽しんだり、苦しんだり、いろいろな感情を味わいながらやっています。
『しびれ』で声を失った青年という難役に挑戦
――ご自身の考えが変わるきっかけになった出会いはありますか?
榎本:演技の考え方でいうと、やっぱり『しびれ』の撮影です。内山(拓也)監督から教えていただいた演技のコツはすごく勉強になったし、自分の芝居に対する向き合い方もかなり変わりました。撮影は2024年の冬だったので、もう2年くらい前ですね。
――具体的に、内山監督からはどういったアプローチがあったのでしょうか。
榎本:僕が演じた大地のような子も、実際に世の中にいるわけで。内山監督の言葉をきっかけに、そういう子たちの生き方について深く考えるようになりました。首元をつねるような共通の癖があったり、時には万引きをしてしまったり。「生きるためには仕方ないこともあるのかもしれない」と、自分なりに役を深めていくことができました。
――この作品を経て、「ここが成長できたな」と感じる部分はありますか?
榎本:内山監督には、「こういう動きにしたらどうですか」と自分から提案することができたんです。そこで、自分が本当に大地になって演じられたような気がしました。
――内山監督に対して、なぜ自分の意見を言えたのでしょうか。
榎本:きっと監督が子ども扱いしない方だったからだと思います。対等に話してくれたので、すごく話しやすかったんです。実際、僕が提案した動きを「いいね」と反映してくれたりもして。「大地ならこうするんじゃないかな」と、自分から生まれた思いを大事にしてくれたことが嬉しかったです。
――今回は声を失った青年役ということで、いつもとは違う難しさがあったのでは?
榎本:声が出せない分、目や顔の動き、癖で思っていること、伝えたいことを表現しなければいけなくて。思いきり感情をぶつけたい時にも言葉でぶつけられないので、すごく難しいし、やっぱり大変でした。大地はホワイトボードで気持ちを伝えるんですけど、彼は右利き、僕は左利きで……。
――右手で書く練習をしたんですか?
榎本:大地はあまり教育を受けてこなかったので、ペンの持ち方も変だし、字も汚いんです。僕が右手で頑張って書いた文字がちょうどいい質感になったので、それをそのまま使っていました。ただ、書くスピードは速くなければいけないので、空いた時間に学校のノートに書いて練習していました。
――母親役を演じた宮沢りえさんの印象は?
榎本:撮影以外の時は、明るくて優しい方なので、すごく楽しかったです。でも、撮影が始まった瞬間にガラッと雰囲気が変わるんです。そこが本当にすごいなと思いました。実は撮影が始まる前に、(同じく大地の幼少期を演じた)加藤庵次くんと僕と監督と宮沢さん、それからプロデューサーさんの5人で、親睦を深めるために遊園地に行きました。
――一緒にジェットコースターに乗ったりも……?
榎本:宮沢さんは「ジェットコースターにはあまり乗らない」とおっしゃっていたんですけど、僕たちが「乗りましょう、乗りましょう! 行きますよ!」と言って乗ってもらいました(笑)。撮影前に打ち解けられたので、現場にも入りやすかったし、いい思い出になりました。
――緊迫したシーンも多い作品ですが、裏ではそんなほんわかしたエピソードがあったんですね。
榎本:宮沢さんが暴力を受けるシーンでは、僕は最初、奥の部屋にこもっているんです。声だけが聞こえてくるんですけど、それがめちゃめちゃリアルで……。ずっとドキドキしていて、おびえながら部屋から出ていきました(笑)。
――だからこそ、あのリアルな緊張感が生まれていたんですね。
榎本:そうですね。あのシーンは、あまりカットせずに撮っていた記憶があります。本物のお芝居を見た気がして、本当にカッコよかったです。