『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』が思い出させてくれる“いつかの夏休み”

 ではどうするのか? ここでスパイダーマンが見せるのは、人生の“先輩”として、悩み苦しむ若者に接することだ。自分のことを率直に語り、相手のことを知ろうとする。スパイダーマンの特殊能力はなく、普通の人間として接するのだ。最後の対峙ではビルを飛び回ることも、怪力を発揮することもない。だからこそ、私たちはスパイダーマンという非日常の塊のような存在を身近に感じることができる。

 人は年齢で大人になるのではない。子どもに大人らしく振る舞うとき、初めて大人になるのだ。本作でスパイダーマンは後輩を完全に卒業し、大人のヒーローとして一歩を踏み出した。私が親戚のおじさんみたいな気持ちになったのは、ここに原因がある。10年前はごく普通の少年だったヒーローが、自分より年下のヒーロー(ジーン・グレイは『X-MEN』の主要メンバーである。恐らくこれから新『X-MEN』として物語が紡がれるのだろう)のために命を張って道を示したのだ。「すっかり立派になって……」そんな感慨深さを覚えてしまうのも仕方がないだろう。

 そして、本作が優れたバランス感覚だなと思ったのは、大人もまた子どもの振る舞いから学ぶことができると描いていることだ。孤独を抱えたピーター・パーカーは、ジーンと向き合う中で、そんなものは抱えきれないと気が付く。彼が最後に見せるある行動は、まさに「ブランニューデイズ=新しい日々」にふさわしい。私はここで涙が噴出しそうになった。幸せになってほしいものである。

 10年も成長を見てきた少年が、今や立派な大人になっている。そしてあれこれ苦労しながらも、自分なりに幸せになろうと頑張っている。たとえフィクションであっても、そういう姿を見るのは嬉しいものだ。心は完全に親戚のおじさんである。もちろん夏休みのアクション映画としてもオススメだが、いつかの夏休みの親戚のおじさん・お兄さんたちの気分を追体験したい人にもオススメしたい。もっともこんなことを書いておいてあれだが、私の場合は親戚のあいだで揉め事があったせいで、もう極々近しい人以外には会えないのだけど。なんか身内同士で金の持ち逃げがあったらしいよ。悲しいね。

■公開情報
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』
全国公開中
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ジェイコブ・バタロン、ジョン・バーンサル、トラメル・ティルマン、マイケル・マンド、マーク・ラファロ
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
スタン・リー&スティーヴ・ディッコのマーベル・コミックに基づく 
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル、アヴィ・アラド、レイチェル・オコナー
エグゼクティヴ・プロデューサー:ルイス・デスポジート、デヴィッド・ケイン
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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公式サイト:https://spiderman-movie.jp 
公式X(旧Twitter):https://x.com/SpidermanMovieJ

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