『ラストノート』第3話にして急展開 “澄晴”寺西拓人が初めて見せた素顔

 ただ、優子の行動を単純に澄晴への“愛”と名前をつけることには抵抗がある。澄晴を自分の分身と称し、葵に「また私たち親子の間に割って入るようなことがあったら許しません」と警告した眞澄(佐々木蔵之介)の行動も同様だ。

 かつては経営者で、澄晴を跡継ぎにすることだけが生き甲斐だった眞澄。しかし、澄晴が画家の夢を抱き、「親父みたいな生き方はしない」と反発したことをきっかけに、眞澄の心も家庭も崩壊してしまった。そのことに澄晴が罪悪感を持っているのをいいことに、眞澄は未だ彼を支配している。結局のところ、優子も眞澄も自尊心を満たすために澄晴を利用しているだけなのだ。

 だからこそ、葵が純粋に自分のためを思ってかけてくれた言葉に澄晴は心を動かされたのかもしれない。眞澄が起こした事件の示談金を捻出せねばならず、会社をクビになる期限も迫り、追い詰められた澄晴にとって、優子は葱を背負ってきた鴨のようなものだった。だが、かつて自分の夢を応援してくれていた絵画教室の恩師・二宮(丸山智己)との再会をきっかけに、澄晴の中で「このままでいいのか」という迷いが生まれたのだろう。

 自然と葵の顔が浮かび、電話をかけていた澄晴。葵は彼の迷いを察し、「自分を信じて」と声をかけた。それは、葵が調香師だった頃の自分にかけてあげたかった言葉。葵はかつて自社ブランドの香水の開発を任されていたが、自分を信じきれず、プロジェクトは頓挫し、そのせいで花の香りがわからなくなってしまった。澄晴には、自分と同じような後悔を味わってほしくなかったのだ。

 澄晴は優子をギャラリーに連れていき、300万の絵画を購入させようとするが、すんでのところで思い留まる。優子がサインした契約書を破り、上司の新谷(淵上泰史)に会社を辞めると宣言。眞澄にも示談金を払わないと告げ、澄晴が向かったのはピオニーの絵が飾られている駅だった。その絵の前で、葵と澄晴は出会い直す。必ずお金は返すと言いつつも、切符を買うほどの小銭すら持ち合わせていない澄晴に呆れて笑う葵。そんな彼女に見せた、ちょっぴり恥ずかしそうな笑顔が澄晴の素顔なのだろう。

 「1つの変化が予期せぬ出来事を呼び寄せる。この先の現実がどんなものであっても一緒に見ていってほしい、この人に」という澄晴のモノローグからは、微かに芽生えた葵への愛情が感じられる。だが、同時にこれから起こる悲劇を物語っているようで不穏だ。澄晴の変化をきっかけに、優子と眞澄、さらには莉奈(桜井日奈子)の負の感情が、一挙に葵へと集まる予感がした。

■放送情報
木曜劇場『ラストノート』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00〜22:54放送
出演:内田有紀、寺西拓人、坂井真紀、桜井日奈子、草川拓弥、徳井義実、佐々木蔵之介ほか
脚本:的場友見
演出:相沢秀幸、中前勇児
プロデュース:三竿玲子
主題歌:椎名林檎「裸」(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
制作・著作:フジテレビ
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