『令和のダラさん』は今期最大のダークホース 民俗学ホラー×コメディを両立した必見作に

ダラさんの呪いを中和する日向と薫の「軽さ」

 そして、この息の詰まるような過去の惨劇と、現代のコメディとの間で完璧なバランスを取っているのが、ダラさんと出会い、仲良くなるきょうだい・日向と薫の存在である。彼らは、本来であれば呪い殺されてもおかしくない祟り神に対して、一切の畏敬の念を抱かない。恐怖心がないというよりも、彼らの持つ「令和」という時代特有のフラットでドライな価値観が、オカルト特有のじめじめとした湿気を鮮やかに弾き返しているのだ。祟り神を前にしても無邪気にはしゃぎ、彼女を恐ろしい存在としてではなく、少し変わった“近所のお姉さん”として扱う。

 このきょうだいの徹底した「軽さ」とポジティブさが、ダラさんが抱える何百年もの重い呪いを、少しずつ中和していくのである。凄惨な過去の記憶がフラッシュバックした直後に、この姉弟とのシュールで微笑ましいやり取りが挿入されることで、物語に極めて心地よい緩急が生まれる。怪異ものとしてのゾッとするような怖さをしっかりと残しつつも、エンターテインメントとしてのポップさを両立させているバランス感覚は、見事と言うほかない。

 しかも日向の霊感がかなり、薫もそれなりに高いことや2人の家や母のことなど、実は物語の伏線として全てが繋がっていて、毎話観るたびに「もしやこれは……!?」と身を乗り出したくなる。日常パートの掛け合いも普通に面白くて、とにかく塩梅がすごい本作。サラッとやっていることが、文化や歴史に対する造詣やインプットの幅広さ、そしてそれを“面白い物語”として構築する原作者の類稀なる力がなければ成立しないものばかりで、それこそが本作の持つ底知れない“恐ろしさ”なのである。

ハートウォーミングなドラマとしての魅力も

 ダラさんがかつてどれほどの絶望を味わったのかを知るからこそ、日向や薫との他愛もない日常パートで、彼女がふと見せる楽しそうな表情や不器用な温かさが、観ていてたまらなく嬉しくなる本作は、単なるオカルトコメディの枠を超え、気づけばホロリと泣けてくるようなハートウォーミングな人間ドラマとしての見どころも多い。

 特に印象的なのが、薫の担任教師が登場するエピソードだ。ダラさんは最初、教師を見た目だけで判断しようとするが、自身の過去を思い返し、深く反省する。人間社会の理から外れた存在でありながら、自身の偏見や過ちを素直に認められる姿は、彼女の本来の人となりを強く印象づける。と同時に、エンタメの勢いを殺さずにこうした誠実な心情描写や良質なモラルを挟み込める点にも、本作が「良作」たる所以を感じさせる。

 恐ろしくも笑えて、そして時折心温まる『令和のダラさん』。フェティッシュな入り口から視聴者を誘い込み、気づけば深い沼へと引きずり込む、この今期のダークホース作品から目が離せない。

■放送情報
TVアニメ『令和のダラさん』
TOKYO MXほかにて、毎週木曜22:30〜放送
キャスト:田村睦心(ダラさん役)、津田美波(三十木谷日向役)、寺澤百花(三十木谷薫役)、古賀葵(初瀬川周役)、杉田智和(筆木直道役)、相沢舞(五十子美和役)、早見沙織(姉巫女役)、大塚芳忠(おろち役)、てらそままさき(ナレーション)
原作:ともつか治臣『令和のダラさん』(KADOKAWA刊)
監督:鈴木理人
シリーズ構成:木村暢、山田靖智
キャラクターデザイン:菊田幸一
衣装デザイン:竹本佳子、牛ノ濱由惟、山﨑理璃花
怪異デザイン:度会竜司、見原由真
プロップデザイン:池上理恵
色彩設計:吉田隼人
美術設定:友野加世子、乗末美穂、大久保修一
美術監督:丸山由紀子、竹越輝子
美術:アトリエムサ
撮影監督:何文馨
撮影:旭プロダクション
編集:石井亜美
音響監督:桑原一輝
音響制作:INSPION EDGE
音楽:石塚玲依
音楽制作:ランティス
OP主題歌:「ダラダラ♡ダンシング」
ED主題歌:REIRIE「ひなたぼっこ」
アニメーション制作:旭プロダクション
©ともつか治臣・KADOKAWA/令和のダラさん製作委員会
公式サイト:https://www.darasan-anime.com/
公式X(旧Twitter):@darasan_anime

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