『最後列からの声』チェ・ヒョヌクの才能に惚れ込む チェ・ミンシクと渡り合う実力

 6月26日より配信中のNetflixオリジナルドラマシリーズ『最後列からの声』。グローバルOTTランキング集計サイト『FlixPatrol』によれば、配信されて3日で韓国や日本を含む全世界32ヵ国でTOP10入りし、1週間が経過してもなお日本の「今日のTOP10」で第3位をキープした。配信継続中で破竹の勢いを続ける『エージェント・キム:リアクティべーティッド』『鉄槌教師』がそれぞれ第1位、第2位につける中、すでに一挙6話が配信された本作がこのように支持されているのは注目に値するだろう。

 本作は、大学の国文学科の教授であるホ・ムノ(チェ・ミンシク)が、生徒の一人イ・ガン(チェ・ヒョヌク)の類い希な文才を知り、創作の個人教授を請け負ったことで巻き起こるサスペンスドラマだ。湖に打ち上げられた謎のトランクをめぐり男女の愛の機微を重層的に描いた『トランク』の演出家キム・ギュテ監督が、スペインの作家ファン・マヨルガの戯曲「最後列の少年 El chico de la última fila」をドラマ化した。前作同様、ドラマティックな展開や俳優の持ち合わせる華で見せるタイプの作品とは異なるが、SNSでは作品に魅せられたフォロワーたちによる解釈が熱気を帯びている。いわゆる“サイダードラマ”と呼ばれるスカッとするドラマが好まれる配信系、特にNetflixにあってはたしかに異色とも言えよう。

 ホ・ムノは、作家として成功できなかった鬱屈を、授業の課題で提出させた生徒の作文を罵倒して一時の溜飲を下げている、登場早々から人間として極北にいるキャラクターだ。劣等感に満ち満ちた彼はガンが提出した課題作文に引き込まれ、課題を小説へと完成させるべくガンが頼んでもいない個人指導を自ら買って出る。表現者として名声を得られなかった彼が、ガンという若き才能を導く先達者という称号を得て名誉欲を満たそうと考えたのはもちろんだが、それ以上に、幸福な同級生の家族に取り入り一家の秘密を暴いていくというガンの文章は、ムノのみならず人間誰しもが持つ覗き見の欲望を誘ったからにほかならない。

 やがてムノは、ガンの小説に登場している家族が因縁の作家キム・スフン(ホ・ジュノ)一家であると知り、一層物語にのめり込んでいくことになる。映画『破墓/パミョ』で“千万俳優”(観客動員一千万人を超えた映画に主演した俳優)のベテラン、チェ・ミンシクが、キャリアや人気をかなぐり捨てるように、劣等感まみれの老作家ムノを全身全霊で見せており、視聴者はムノが放つ狂信的な創作への情熱に圧倒されるので、あたかもドラマの主導者は彼なのだと錯覚するところがあるだろう。

 しかし、チェ・ミンシクをして「彼の演技に、私が積極的に反応すればいいのだろうと思った。自分は何かをしようとしないつもりだ」(※1)と言わしめたのがイ・ガンを演じるチェ・ヒョヌクであり、彼こそが本作の“真の主人公”である。

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