考察ブームの今再評価したい『古畑任三郎』 田村正和×三谷幸喜が生んだ倒叙ミステリーの妙

 2026年6月、ドラマ『古畑任三郎』(フジテレビ系)全3シリーズ(一部エピソードを除く)がNetflixで配信開始となった。フジテレビ系列の配信サイト・FODでは、スペシャルドラマと外伝的立ち位置である『古畑中学生』を含め、すでに配信されていたが、Netflixを通して、これまで『古畑』に触れたことのない世代にも作品が届くことが、一ファンとしては嬉しい。

 『古畑任三郎』(以下、『古畑』)は、脚本家の三谷幸喜と当時フジテレビ編成部にいた石原隆が『刑事コロンボ』の大ファンだったことから誕生した。「田村正和は刑事役をやらないらしい」と風の噂で聞いた三谷は、当初は別の俳優を想定していたものの、脚本を書き進めるうちに、田村に古畑を演じてほしいという思いを強くする。オファーされた田村もまた、知性だけで犯人を追い詰める銃を持たない刑事像に興味を持った。黒のジャケットにノーネクタイという古畑のトレードマークは、田村のアイデアによるものだ。

 ドラマ視聴と“考察”が切っても切り離せない関係になった今、令和世代にとって新鮮に映るのは、『刑事コロンボ』に倣った倒叙式のスタイルではないだろうか。『古畑』は基本的に、ゲストによる犯行シーンから幕を開ける。最初から犯人が開示されているため、トリックのカラクリそのものよりも、完璧だと思われた犯行のほころびを古畑がどう見抜き、いかにして犯人を自白へと追い込むかの“心理戦”が見どころだ。

 そもそも、最初から犯人が明かされている『古畑』には、視聴者にとって最もわかりやすい“答え合わせ”という報酬がない。「犯人は誰だったのか」という驚きも、「自分の推理は当たっていた」という快楽も得られないのだ。

 だからこそ、『古畑』のような倒叙式ミステリーは、犯人との会話そのものがおもしろくなければ成立しない。当時すでにトップスターだった田村正和と、毎回迎える豪華ゲストとの一騎打ちは、毎週放送されるテレビドラマとは思えないほど贅沢だった。中森明菜、堺正章、菅原文太をはじめ、ゲストの顔ぶれも実に多彩だ。

 そんな会話劇に重心があるからこそ、『古畑』のおもしろさは30年以上経った今なお錆びることがない。三谷幸喜の軽やかな筆致と田村正和の唯一無二の佇まいが溶け合ったやり取りは、何度も何度も観返したくなってしまうのである。

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