のせりんを誰もが応援したくなる 福井の美しさが詰まった『ライフセーバー!』の輝き
あの夏、僕は太陽に出会った。
そんな男性主人公のモノローグで本編が始まったら、その「太陽」とは女性のことだと思いがちだ。ありふれたひと夏の恋物語だとしたら、あまり興味がそそられないなと思った。魅力的な女性キャラ(後述)も登場するが、彼女は仲間であり、よき理解者であり、そして人生のライバルだ。主人公と彼女がくっついたの離れたのという物語にすることもできただろうが、そんなありふれた作品なら、筆者は続けて2回も観なかったし、ここで取り上げることもなかった。
この物語は、福井県若狭和田の美しい海でライフセービングに出会う、ひとりの若者の姿を描いている。監督は児玉宜久。これまでにも、『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。』(2018年)、『おしょりん』(2023年)と、福井県を舞台にした映画を撮り続けている。同じ舞台にこだわり続ける映画監督としては、他にも故・大林宣彦監督がいる。ただ、大林監督がこだわる広島県尾道市は彼の生まれ育った街だが、児玉監督は東京出身である。なぜ福井にこだわるのか。
それは、福井の美しさに魅せられたからではないだろうか(筆者の勝手な想像である。一度ご本人に聞いてみたい)。『えちてつ物語』でのえちぜん鉄道沿線の田園風景や四季の移り変わり。『おしょりん』での一面純白の雪景色。そして本作での、若狭の広く美しい海。目標を見失った主人公が、若狭の海にただ浮かんでいるだけのシーンがある。ひたすらにデカく美しい海と、ひたすらにちっぽけな人間。筆者は、コロナ禍前は毎年その若狭の海に泳ぎに出かけていた。若狭の海の美しさも雄大さも、身をもって知っている。あのシーンの残酷なぐらいに美しい対比は、若狭の海だからこそ撮れたものであろう。
そのちっぽけな主人公を演じたのせりんが素晴らしい。もともとファッションモデルであり、俳優としてのキャリアはまだ浅い。だが、まだ何色にも染まっていない純白さが、本編の主人公・大友勇輝にがっちりハマっていた。物語序盤の彼は、大学3年生でありながら就職活動にも身が入らず、生きる意味さえ見失ったような無気力な若者だった。死んだ魚のような目をしていた彼がライフセービングに出会い、徐々に目に光が宿りだし、少しずつ「いい顔」になっていく過程を、ぜひ観てほしい。大友勇輝という役柄上の人物というより、俳優・のせりんの成長記録を見ているようである。半端に達者な俳優ではなく、まだ真っ白な彼が主人公を演じたことにより、観ているこちらはいつの間にか彼を応援してしまっている。これから、のせりんがどのような俳優となっていくのか。見届けていきたい。