『月夜行路』作間龍斗の“一人二役”が切ない 太宰治『グッド・バイ』と重なる別れの真相

日本テレビ系水曜ドラマ『月夜行路 ―答えは名作の中に―』第4話では、涼子(麻生久美子)が追い続けてきたカズト(作間龍斗)探しに、ついに答えが示された。だが、その答えは彼女の未練をきれいに終わらせるものではない。真実が明らかになったからこそ、涼子が長いあいだ心の中に抱えてきた空白の大きさが、より痛切に伝わってきた。

“佐藤”姓の店や会社を訪ね歩く作業も残りわずかとなり、カズト探しはいよいよ行き詰まりを見せ始める。それでも涼子とルナ(波瑠)は諦めなかった。カズトが串カツ好きだったという何気ない記憶を頼りに、串カツ店にまで聞き込みに向かう姿からは、涼子の中で彼との時間がまだ鮮明に残っていることが伝わってくる。会える保証はほとんどない。それでも探し続けるのは、昔の恋に戻りたいからではなく、最後の電話に出なかったあの日から止まっていた気持ちに、きちんと区切りをつけたいからなのだろう。

カズト探しが行き詰まりかけたところで、涼子たちの前に現れたのが、青年・奏(作間龍斗/※一人二役)だった。奏はカズト本人ではない。だが、その面影はあまりにもよく似ていて、涼子が思わず見入ってしまうのも無理はなかった。20年前の記憶が、突然目の前に現れたような感覚だったのだろう。作間龍斗は、カズトと奏を演じ分けながら、似ているからこそ涼子の心を揺らす存在として奏を見せていた。目の前にいるのは別人なのに、そこにカズトを重ねてしまう。その切なさが、この場面にはあった。
やがて、涼子が長年知りたかった真実が明かされる。奏の母であり、IT企業「SATOソリューション」の社長でもある貴和子(鈴木砂羽)は、かつてカズトが涼子に別れを告げた時、隣にいた女性だった。涼子はずっと、カズトに別の恋人ができたのだと思っていた。だが実際には、貴和子はカズトの姉だった。火傷で入院したカズトは、その時に末期がんが見つかり、余命半年と宣告されていたという。涼子にその事実を知らせず、自分から離れてもらうために、カズトは姉に恋人のふりを頼んでいたのだ。しかも彼は、涼子と別れてからわずか4カ月後に亡くなっていた。

もちろん何か考えがあってのことだろうとは思っていたが、カズトは、涼子を傷つけたくて別れたわけではなかった。病気のことを知らせず、自分の死に巻き込まないために、あえて貴和子を恋人のように見せて涼子を遠ざけたのだ。けれど、何も知らなかった涼子にとっては、その別れ方こそが長い傷になってしまった。最後の電話に出なかった後悔も、ずっと彼女の中に残っている。カズトはあの時、何を伝えようとしていたのか。
ここで太宰治の『グッド・バイ』が引かれるのも、このドラマらしい。さらに胸を締めつけるのが、カズトの部屋に残されていた本の書き込みだ。カズトは、本の余白に思いを書き込みながら読む、いわゆるマルジナリアの習慣を持っていた。最後に読んでいた『パンドラの匣』には、死を前にした彼の思いが生々しく残されている。そこに記されていた「ありがとう、りょうこ」という言葉は、涼子がずっと知りたかったカズトの本心そのものだった。

カズトの仏壇の前で涼子が倒れ込む場面は、真実を知った衝撃の大きさを物語っていた。探し続けてきた相手は、もうこの世にいない。だからこそ墓前での別れは、再会ではなく、長い時間抱えてきた後悔に区切りをつける時間になっていた。カズト探しの旅はここで終わる。けれど涼子がたどり着いたのは、昔の恋を取り戻すことではなく、止まっていた自分の時間を少しだけ前に進めることだった。

カズト探しがひとつの区切りを迎えた一方で、涼子が帰る場所には夫との関係や家族の問題が残っている。ルナが大阪で菊雄(田中直樹)とひっそりと会っていたが、2人の間はどのような関係があるのか。いろいろと勘繰りたくなってしまう終わり方だった。
■放送情報
『月夜行路 ―答えは名作の中に―』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~放送
出演:波瑠、麻生久美子、作間龍斗、久本雅美、栁俊太郎、渋川清彦ほか
原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社文庫)
脚本:清水友佳子
音楽:Face2fAKE
演出:丸谷俊平、明石広人
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/getsuyakouro/
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