映画『転スラ』ゴブタの活躍は“下剋上ヒーロー”の真髄か 本編に繋がるディアブロの暗躍も

 4月からTVアニメの第4期が分割5クールで放送される『転生したらスライムだった件』(以下、『転スラ』)。これに先駆け2月27日から長編アニメ『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』が公開となった。スライムから魔王になったリムル・テンペストをはじめとしたキャラクターたちについて思い出させつつ、TVシリーズでは見られない意外なキャラのラブロマンスで楽しませてくれる映画だ。

 『転スラ』のキャラで誰が好き? そう聞かれた1000人が挙げる名前がひとケタに止まることはないだろう。主人公のリムルに暴風竜ヴェルドラにベニマル、シュナ、シオン、ソウエイ、ハクロウといった妖鬼たちがいて、ミリム、ラミリス、ルミナスといった美少女姿の魔王たちがいてこれで10人。ここに忘れてくれるなと悪魔ディアブロが入り、象徴的な存在のシズさんが入り、シーズン3から出番を増やした聖騎士団長のヒナタが加わっても、大賢者がいないトレイニーがいないエルメシアがいないガゼル王がいない中庸道化連の面々がいないと異論を唱える人が出るだろう。

 とにかくキャラが多い作品だ。そしてその誰もが個性的でしっかりとした存在感を持って『転スラ』という壮大で長大な物語に絡んでくる。TVアニメ化されていない原作の続きでキャラはさらに増えていき、物語の方も壮絶さと複雑さを増していくだけに、もう誰が好きとは言っていられなくなり、キャラも世界観も全部好きだと言うしかなくなってくる。

 そんなシリーズだけに、リムルを中心としたジュラ・テンペスト連邦国の主要なメンバーにスポットが当たった『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』は、キャラ推しの原点に立ち返ることができる貴重な“番外編”だ。

 シーズン3で描かれたテンペストの「大開国際」から少し後の時間を舞台にしたストーリー。国家的な大事業で奔走したメンバーを慰労する意味も込めて、参加していた魔導王朝サリオンの天帝エルメシアが一同を自国内のリゾート島へ招待する。海に囲まれおいしい料理とおいしいお酒にあふれた島でベニマルら妖鬼の男たちは釣りに行き、賑やかなことが大スキなヴェルドラとミリムは街へと飛び出し屋台を回り、ルミナスやラミリスやエルメシアは酒に浸る。そして、リムルはシュナやシオン、エレンと共に島を歩き回り海辺にも行って水着で泳いでファンを楽しませる。

 まさにキャラ推しのファンのためのサービスアニメといった感じだが、そうしたキャラたちの中から一頭抜きん出てくるのが、本編でもダークホース的な存在のゴブタだ。2025年にGCノベルズ編集部から発表されたキャラクター人気投票でも23位(※)とそれほど目立っていない存在だったが、大開国際の闘技大会の決勝に残る活躍ぶりで、最弱ながらもテンペスト四天王の一角に名を連ねるようになっていた。そしていよいよゲストヒロインのお相手を務めることになった。皆無ではないゴブタのファンにとってこれは大事件だ。

 シュナ、シオン、エレンを連れたリムルについていたゴブタが、陰から一行の様子をうかがう女性に気づく。近づこうとするところを止めて理由を聞こうとしているうちに、リムルに置いていかれたゴブタは、ユラと名乗った女性とともにリムルを追いかける。そこに謎の敵。ユラを連れ去ろうとした相手を阻止して戦うゴブタの姿が、本編ではなかなかお目にかかれないメインヒーローとしての輝きを放つ。

 そしてゴブタは、ユラが海の底にあるカイエン国を長く守り続けて来た水竜の巫女だということを知り、悪巧みをしていた宰相が退けられた後も続いた何者かによる襲撃からユラを守ろうと体を張る。見かけこそ子どものようだが、剣鬼のハクロウによって鍛えられ、影を潜り抜けて移動する技を取得し、狼の魔物のランガとの合体技まで繰り出せるようになったゴブタの戦いぶりを、じっくりと観られるのはもしかしたらこの映画が初めてかもしれない。

 『転スラ』の多彩なキャラたちのファンが、ゴブタは担当外だということで関心を向けづらいところもある映画だが、ベニマルやヴェルドラといった型にはまったランク上位のヒーローではなくても、頑張れば美女に振り向いてもらえる可能性を見せてくれるという意味で、ランク外にあえぐ大勢の人に励みになる。振り返ってみれば、リムルも転生前は独り身のサラリーマンで、転生後は最弱のスライムという底辺から下剋上を果たしたヒーローだ。そんな『転スラ』という作品の真髄を、リムルの大出世後もひとり体現してみせるゴブタを、『転スラ』好きなら応援しないではいられない。

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