シシド・カフカが『パン恋』で見せる“らしさ”と“ギャップ” 朝ドラ、舞台の経験から紐解く
仕事での苦悩や恋愛の疑問を“動物の求愛行動”から解き明かしていくドラマ『パンダより恋が苦手な私たち』(日本テレビ系/以下、『パン恋』)では、第6話時点ですでに多様な恋模様が描かれている。徐々に椎堂(生田斗真)への恋愛感情を募らせる一葉(上白石萌歌)だったが、告白する直前に彼から告げられた「あんなふうに気楽に出かけられる友人はいなかった」という言葉に撃沈。2人の距離感が縮まったり離れたり、エピソードごとに目まぐるしく変化する本作において、ブレることのない強烈な存在感を放っているのがシシド・カフカ演じる灰沢アリアだ。
元々、ファッションモデルとしてカリスマ的な人気を誇りながらも、3年前からモデルの仕事を休んでいたアリアだが、生活情報誌『リクラ』の恋愛コラムを受け持つことになる。自身のゴーストライターを務めることになった一葉の憧れの眼差しに対してもまったくおもねることなく、手厳しい言葉をかける彼女の姿は孤高の雰囲気をまとっている。ミュージシャンとしての活動だけでなく、モデルの仕事も颯爽とこなすシシド・カフカの長身スタイルとクールな表情がバッチリと似合うキャラクターで、まさに適役といえるだろう。
しかし、かつての恋人だった椎堂と番組収録のスタジオで因縁の再会をすることになった第6話では、彼女のクールな佇まいに隠された優しさや弱さが垣間見える。モデルに復帰するチャンスを獲得できたのは、一葉のがんばりのおかげだと薄々感じていたアリアは、苦手だったウサギの世話にもチャレンジしながら、彼女の恋愛相談にも親身になって寄り添う。自身が椎堂と恋仲だったことも正直に打ち明けたうえで、仕事も恋愛もあと一歩が踏み出せない一葉の背中を強く押していくところに、彼女の見えない優しさがあった。それでも、モデルの世界に再び戻ってくることに不安を抱えていたアリアは、一葉に「たすけて」とメッセージを送る。これまではずっと強気な姿しか見せてこなかった彼女が、目に涙を溜めながら不安を吐露する様子は、シシド・カフカの一転したギャップのある弱さを見せる芝居が一際映えるシーンだった。
勝ち気な女性を演じることの多いシシド・カフカだが、初めての朝ドラ出演となったNHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年度前期)の久坂早苗役では、ミステリアスな彼女の不器用な優しさを役柄に滲ませた。早苗は主人公のみね子(有村架純)が引っ越してきたあかね荘の住人で、有楽町のオフィスレディ。感情を表に出さず、ほとんど表情も変えずに正直な言葉をぶつける早苗は謎多き女性で、周囲の人々からは若干怖がられていたものの、何かとみね子の仕事や人生を気にかける姿は優しかった。
また、2025年はドラマだけでなく、映画や舞台の場へと活躍の幅を広げている。原田マハの小説が原作となった映画『風のマジム』で演じた糸数啓子は、シシド・カフカの本領が発揮された人物といえるだろう。沖縄のサトウキビを使ったラム酒作りに果敢に挑戦する主人公・まじむ(伊藤沙莉)に対して、糸数はビジネスの視点から彼女の事業計画の不備を指摘する。まじむにとっては耳の痛い話で、時には意地悪な言葉に聞こえてしまうこともあるが、大きく目を見開いて、真剣な表情で重みのある言葉を投げかける姿を観ていると、彼女の芯の通った生き方がひしひしと伝わってきた。
さらに、劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠が脚本と演出を務め、ニッポン放送とタッグを組んだ舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』では、今までとは異なる一風変わった特徴を持つ漂流吟遊詩人のニルダを演じている。SFアクション音楽コメディを冠した突飛な設定と個性的なキャラクターが闊歩する舞台の上で、シシド・カフカはまったく埋もれることのない存在感を放ちながら、コメディチックな会話の応酬にも参戦していく。トラブルが頻発する宇宙船の船内でも凛とした表情で、ブレることのない個性を発揮したかと思いきや、軽快に打楽器を叩く姿は美しさすら感じるほど。舞台初挑戦ながら堂々たる芝居を披露しており、俳優としての彼女の新たな魅力を発見できる役柄だった。
現在放送中の『パン恋』では、一葉とも椎堂とも密接なつながりがあり、重要なポジションに位置している。間違いなくアリアの存在は物語の後半戦、2人の恋の行方を大きく左右することになるはずだ。彼女を演じるシシド・カフカの堂々たる芝居から、今後も目が離せそうにない。
恋が苦手とされるパンダなど動物たちは、実は限られたチャンスを活かす「恋愛上級者」だった。動物の求愛行動から、常識に囚われる現代人がシンプルに幸せになるヒントを解き明かす。
■放送情報
『パンダより恋が苦手な私たち』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00~放送
出演:上白石萌歌、生田斗真、シシド・カフカ、仁村紗和、柄本時生、三浦獠太、片岡凜、佐々木美玲、佐々木史帆、髙松アロハ(超特急)、平山祐介、宮澤エマ、小雪、筧美和子
原作:瀬那和章『パンダより恋が苦手な私たち』(講談社文庫)
脚本:根本ノンジ
演出:鈴木勇馬、松田健斗、苗代祐史
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:藤森真実、白石香織(AX-ON)
音楽:MAYUKO
主題歌:生田斗真「スーパーロマンス」(Warner Music Japan)
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/pankoi/
公式X(旧Twitter):https://x.com/pankoi_ntv
公式Instagram:https://www.instagram.com/pankoi_ntv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@pankoi_ntv