『ばけばけ』吉沢亮の“絶望を超えた無の感情”に息を呑む 錦織の人生が報われることを願う

錦織(吉沢亮)の横顔を映したラスト35秒。あまりにも切なく、それでいて美しい映像に思わず息を呑んだ。
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は第20週から熊本編に突入する。第19週「ワカレル、シマス。」は、トキ(髙石あかり)がヘブン(トミー・バストウ)の思いを受け止め松江を離れることを決断するまでと、親友との別れが描かれる。

それはトキにとってのサワ(円井わん)であり、ヘブンにとっての錦織だ。熊本にいる未来のトキと正規の教員になって“川のあっち側”にいる未来のサワへとそれぞれが叫び、涙でぐしゃぐしゃになる2人。一方で、ヘブンは錦織ときちんとした別れをすることなく、1年2カ月暮らした松江を離れることになった。
ヘブンは教壇に立ち、生徒たちに「これが人生だから」とシンプルな理由(ヘブンなりの建て前でもあるだろう)とともに熊本に行くことを伝える。しかし、錦織ではなく庄田(濱正悟)が松江中学の校長になること、錦織が帝大を卒業していないどころか、英語の教員資格免許すら持っていないことを生徒と一緒のタイミングでヘブンも知り、ヘブンにとってはここから想定外の事態となっていく。
ヘブンが錦織を見つけたのは、雨が降りしきる学校の庭。ヘブンは自分が松江を離れることで錦織の校長就任に影響が及んでしまったのだと責任を感じ、江藤(佐野史郎)に申し入れをしてみるとヘブンは話すが、「いいんです。いつかはこうなると思ってましたから」「あの、本当に……大丈夫なんで。そんなことじゃないんで」という錦織の言葉に、ヘブンは何も返せない。錦織は笑って去っていく。これがヘブンと錦織の別れとなってしまった。
松野家が松江を離れる日。錦織の弟・丈(杉田雷麟)は、ヘブンに授業を教わるため、正木(日高由起刀)とともに熊本に旅立つことを決めていた。錦織はずぶ濡れになって身体を冷やしてしまったためか、「体調があまりよくない」と見送りには行かなかった。見送りの人々のなかに錦織の姿を探すヘブン。丈から事情を聞き、錦織に会いに行こうとヘブンの手を引くトキに、ヘブンは「モウ、ダイジョウブ。ワカレル、シマシタ」と話すが、その顔は俯き、不安そうだ。

その頃、錦織は小春日和の窓辺で『日本滞在記』を読んでいた。「文学的にも気が合う唯一の親友である」という文面を読んで、ゴロゴロニヤニヤしていた錦織はどこへやら。咳き込んだ手には真っ赤な血が滲んでいた。顔を上げ、一点を見つめる錦織。窓の向こうに見えるのは松江の空。ヘブンに渡した虫籠に入った虫の声が錦織の書斎にまで聞こえていた。
錦織は“家族”として一緒に「だらくそ」と叫んだ松野家、心の拠り所だったヘブンだけでなく、校長になる機会も失い、さらには病も患ってしまっていることになる。2月13日放送の『あさイチ』(NHK総合)「プレミアムトーク」に登場した吉沢亮は、幼い頃から病弱だった錦織がその時がきたことを悟るシーンであり、「絶望を超えた無の感情」だと芝居にかけた思いを語っている。

役作りのために錦織のモデルとなった西田千太郎の旧居を訪ねる吉沢のメイキング映像も放送されていたが、『ばけばけ』の書斎の再現度に目を見張る。吉沢も話しているように、西田千太郎自身も錦織と同じく、秀才ではあるけど報われていない、ある種の孤独を抱えた人物だったことが想像できる。錦織の妻の気配をあえて描かないのは、その孤独を際立たせるためだろう。
決して第19週が錦織の“退場”ではなく、まだ出番はあると『あさイチ』でも、吉沢のSNSでも強調されている。松江と熊本。距離が離れることで関係性の変化や知らなかった自分の本心が見えることもある。その孤独に温かな光が差し込むことを、錦織が報われたと思える人生を過ごせることを願うばかりだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK






















