興収で読む北米映画トレンド

YouTuberの自主制作映画が北米で異例のヒット 『HELP/復讐島』『メラニア』と大混戦

 1月30日~2月1日の北米映画市場は“異色”のランキングとなった。前週1位の『MERCY/マーシー AI裁判』から首位を奪ったのは、サム・ライミ監督最新作『HELP/復讐島』。週末3日間で2000万ドルを記録し、予想以上のスタートとなった。

 本作は、レイチェル・マクアダムス演じるリンダが、パワハラ上司ブラッドリー(ディラン・オブライエン)とともに、飛行機の墜落事故によって孤島で2人きりになってしまう復讐エンターテインメント。力関係が逆転した2人が巻き起こす、無人島での出来事とは……。

『HELP/復讐島』©2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 海外興収は810万ドルで、全世界興行収入は2810万ドル。製作費は4000万ドルと中規模のため、オリジナル脚本のホラージャンル作品としては上々の滑り出しだ。作品の評判もよく、Rotten Tomatoesでは批評家スコア93%・観客スコア87%、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B+」を獲得。口コミ効果により、劇場興行はもちろん、その後の展開でも優れた結果が期待されている。

 しかしながら、あえて言えば今週のポイントは第2位・第3位の作品にある。第2位はYouTuberのマークプライヤー(マーク・フィシュバック)による初監督作品『Iron Lung(原題)』、第3位はドナルド・トランプ大統領のファーストレディであるメラニア・トランプに密着したドキュメンタリー映画『メラニア』なのだ。

 第2位『Iron Lung』の週末興行収入は1780万ドルで、『HELP/復讐島』とは約200万ドル差(最終的にもっと縮まるとの予測もある)。驚くべきは、かたやディズニー配給作品、かたやYouTuberが配給まで手がけた超インディペンデント映画であることだ。

 本作は、同じくインディペンデントの同名ホラーゲームを映画化したもの。マークプライヤー自ら演じる主人公の囚人は、崩壊した世界で潜水艦に乗り込み、命がけの航行に挑む。製作費は300万ドルで、マークプライヤーは監督・脚本・主演のほか、出資と配給までを一貫して担った。

Iron Lung: Final Trailer

 ビデオゲームのプレイ動画などで人気を博しているマークプライヤーは、YouTubeのチャンネル登録者数3820万人、オンラインのプラットフォームで累計7300万人のフォロワーを誇る人物。出口調査によると、観客の60%が男性で、85%が18歳~34歳という若年層だった。71%が「マークプライヤーが出ているから」映画館に足を運んだという。

 しかし、本作で映画界に進出したYouTuberによる自主制作映画が、なぜ北米3000館規模の拡大公開を実現できたのか。マークプライヤー自身、YouTubeの収益を頼りにこの映画を製作しており、興行収入で利益を上げることや、劇場での拡大公開を実現することは目指していなかったという。

 映画の存在感を高めたのは、ほかでもない彼のファンだった。マークプライヤーが本作の動画に、「地元の映画館に上映をリクエストしたら観られるようになる」と記したことで、ファンの熱烈な上映希望が巻き起こり、サム・ライミの最新作にも匹敵する上映規模となったのだ。

 Rotten Tomatoesでは批評家スコア50%・観客スコア89%(CinemaScoreは発表されていない)。作品が評価されるか、あるいはビジネス的なポテンシャルが認められれば、マークプライヤーがフィルムメイカーとしてスタジオにピックアップされる未来もありうるだろう。日本公開は未定。

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