『超かぐや姫!』が示す“オリジナルアニメの力” 伝説的ボカロ曲&かぐや姫をアップデート

『呪術廻戦』や『龍族-The Blazing Dawn-』といったテレビアニメのスタイリッシュなオープニングムービーで知られるアニメーターの山下清悟が、長編アニメとして初監督した『超かぐや姫!』の配信が1月22日からNetflixで始まった。『竹取物語』という日本の古典を題材にしながら舞台は少し未来の日本を選び、没入感のあるネット空間で歌ったり戦ったりして楽しむ人たちを描いたポップな映像と、かけがえのない出会いを感じさせるストーリーに浸らせてくれる作品だ。
堂々たる大長編だ。142分という時間数は同じ『竹取物語』を題材に扱った高畑勲監督『かぐや姫の物語』(2013年)の137分を上回る。それでいて、ストーリーに引き付けアクションに見入らせ音楽に聞き入らせてフィナーレに感涙させる長編アニメに仕上がっている。これを初の長編監督作品で作り上げたことだけでも凄いが、1分30秒というアニメのオープニングで注目されていた山下清悟監督が成し遂げているのだからさらに驚きだ。

『超かぐや姫!』というからには主人公はもちろん「かぐや姫」。この作品ではかぐやという名前で登場して、酒寄彩葉という17歳の女子高生と交流を持つ。彩葉は幼いころから文武両道の才能を見せていたが、母親のプレッシャーを嫌い、家を出てひとり暮らしを始める。当然家からの仕送りはなし。学校が終わればいくつもアルバイトを掛け持ちして学費と生活費を稼ぐ忙しい日々を送っていた。
唯一の癒やしは、ネット上の仮想空間「ツクヨミ」に入って、管理人であり大人気ライバー(配信者)の月見ヤチヨを推すこと。広大なネット空間の中で自在に動き回っては音楽活動やコミュニケーションに勤しむヤチヨを眺めて喜びに浸りつつ、彩葉もネット空間でのバトルゲームでお金を稼いでいた。そんなある日、彩葉が部屋へと戻る帰り道でゲーミングパソコンのようにキラキラと光る不思議な電柱を見つけてしまう。
そこから現れたのが何と赤ちゃん。見捨てようにも見捨てられず連れ帰ったところ、みるみるうちに大きくなって彩葉くらいの年齢に育ってしまった。まさしくかぐや姫の物語。現れたのが竹ではなく電柱なのが竹林などない現代の都会ならではで、かぐやと呼ぶようになった謎の少女が、ヤチヨに関心を持ってライバーとしてナンバーワンを目指そうとするところも今風だ。
配信時代に描かれる「かぐや姫の物語」

世はまさに配信時代。YouTuberやVTuberが活躍してテレビのタレントやアイドルに負けない人気を誇っている。誰もが気軽にネット空間にダイブできる時代が来れば、なおのこと現実のアイドルよりも身近で、どこからでも会いにいける存在としてライバーの人気も高まるだろう。『超かぐや姫!』は、そうした時代が到来し、いろいろな活動を通して自分を表現できるようになる世界のビジョンを見せてくれる。
人気があればスポンサーがつく。ネット越しに投げ銭ももらえる。そうやって稼いでさらに人気を得ていくスパイラルに自分も乗りたいといった人たちの関心を掬うように、ヤチヨは自分とのコラボライブを景品にしたイベントをスタートさせる。かぐやも当然コラボの権利を獲得しようとライバー活動に勤しむが、まだ駆け出しでとてもトップには届きそうにない。そこで、楽器が弾けてゲームも得意な彩葉を引っ張りだし、2人で人気を得ようと動き出す。
どうすればネットの中で目立てて、支持者を集められるようになるのかといった、YouTuberやVTuberなら気になる方法を見せるような展開。1月1日から劇場公開された河森正治監督の『迷宮のしおり』で、仮想空間から現れ主人公と入れ替わったSHIORIが、1億いいねを目指していろいろな活動をする様子とあわせて観れば、アクセスの少なさに悩む人の参考になるかもしれない。

かぐやにとって彩葉がいたことは、ヤチヨのコラボ相手を決めるイベントで勝ち上がっていく上で大きな意味があった。いろいろな才能を持ちながら遠慮がちな態度を母親に咎められ、意固地になって自分を押さえつけていた彩葉が、超ポジティブで自分がやりたいことに向かって突き進むかぐやに引っ張られ、だんだんと前向きになっていく。周りを気にして自分を出せないでいる人に、もっと勝手に生きようと呼びかけるところがある作品だ。
かぐやに彩葉にヤチヨといった美少女たちが、日常でも「ツクヨミ」の中でも表情豊かに動き回る映像は、『呪術廻戦』や『チェンソーマン』といった異能バトル系のテレビアニメのオープニングで、スピーディーでスタイリッシュなアクションを見せた山下監督らしいのかと戸惑う人も結構いそう。もっとも、令和版『うる星やつら』のオープニングではラムを自在に舞わせ、絢爛としたステージで踊らせ歌わせている。その愛らしくて楽しげな表情なり仕草を見れば、『超かぐや姫!』における美少女たちの饗宴も、山下監督らしさが表れたものだと思えるだろう。





















