躍進続く“上白石姉妹”の強みは等身大のヒロイン像? 恋愛作品で示してきた存在感

躍進続く上白石姉妹のヒロイン像を紐解く

 恋愛作品のヒロイン像は、かつてないほど多様化している。その変化の中で存在感を放ってきたのが、上白石萌音/萌歌の姉妹だ。彼女たちが担ってきたのは、ただ「かわいい」「憧れる」といった感情だけで回収されないヒロイン像だ。迷いながら考え、笑いながら踏みとどまり、それでも誰かと向き合っていく。その等身大の温度が、恋愛ドラマの幅を広げてきた。

 萌歌と生田斗真がW主演を務める、現在放送中のドラマ『パンダより恋が苦手な私たち』(日本テレビ系/以下、『パン恋』)は、上白石姉妹の現在地を最も分かりやすく映し出す作品になっている。

 地上波連続ドラマ初主演となる『パン恋』で、萌歌が演じるのは恋愛コラムのゴーストライターを任される雑誌編集者・柴田一葉。相手役の生田斗真は、動物の求愛行動を研究する准教授・椎堂司として登場し、少しズレた理屈で一葉の距離に踏み込んでくる。とはいえ椎堂は嫌な押しつけ方をする人物ではなく、生田の芝居も“変人”の突飛さを強調しながら、相手への好奇心として見せることで愛嬌を保っている。だからこそ一葉の戸惑いは、ただ振り回されるだけの受難にならず、2人の関係を前に進める推進力になる。恋愛マニュアルではなく動物行動学を手がかりに心の距離が縮まっていくという設定が、王道ラブコメの枠を少し外しつつ、感情の芽生えは丁寧に描いていく。その絶妙なバランスを支えているのが、萌歌の透明感と、自然体のまま笑いを生む表情の豊かさだ。

『パンダより恋が苦手な私たち』©日本テレビ

 『パン恋』の一葉は、仕事も恋も要領よくこなせなくて、理想通りにいかない現実の前で立ち止まってしまうタイプの女性だ。萌歌はその不器用さを、重たい悲劇として見せるのではなく、「気まずい」「照れる」といった感情をそのまま残しながら、チャーミングに変えていく。椎堂の突拍子もない分析に対しても、大げさに驚いたり転んだりするのではなく、言葉を飲み込む一瞬の表情や間でクスッと笑わせる。

 コメディはリアクション勝負になりがちだが、萌歌が効かせているのは、視線の揺れ方や声のトーン、ほんの少し緩む口元といった細かな変化だ。言い返したいのにこらえる、納得できないのに考えてしまう――そんな小さな動きが積み重なることで、一葉はかわいいヒロインというより先に、放っておけない、好きになってしまう人として立ち上がってくる。だから視聴者も、彼女の戸惑いに「わかる」と自然に気持ちを重ねられる。

『ロマンティック・キラー』©2025「ロマンティック・キラー」製作委員会 ©百世渡/集英社

 こうした萌歌の魅力は、2025年公開の映画『ロマンティック・キラー』でもはっきりしていた。萌歌が演じた星野杏子は恋愛に興味がなく、次々と“恋愛強制イベント”に巻き込まれても自分のペースを崩さない。イケメンに囲まれる設定自体は王道でも、杏子は“落ちない”ことが面白さになり、物語を前へ進める推進力になっている。萌歌は鋭いツッコミでテンポを作りつつ、相手を完全に突き放さない温度も残し、杏子が守りたい日常の輪郭まできちんと伝えていた。一方で、『366日』では、切ない純愛を背負うヒロインとして別の強度を見せている。相手を強く求めながらも、時間の経過とともに気持ちの置き場を探していくその揺れを大げさに説明せず、表情と声のトーンで積み上げていくのが萌歌の持ち味だ。恋に前のめりになれない『パン恋』の一葉もまた、恋愛を避けたいのではなく、簡単に踏み出せない理由を抱えている。その揺れから目を逸らさない描き方が、ラブコメでありながら作品の説得力を底上げしている。

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