松山ケンイチ×鳴海唯の絶妙なかけ合い 『テミスの不確かな法廷』が問う“正義”の判断
バスケの練習試合で知り合い、親しくなった栗田奈央と八木一喜。どちらも名前がシンメトリーになっている2人は異母兄弟だった。八木はそのことを知った上で栗田に近づき、この世でたった一人の血が繋がった弟を気にかけてきたのだろう。まさか兄とは思わずとも、栗田は嬉しかったのではないか。3年前に父親を亡くし、母親とも距離がある栗田。犯罪に手を染めたのは、誰かに自分を見てほしいという気持ちの表れだったのかもしれない。だが、それを咎めるどころか、黙認する大人たちに絶望し、どんどん自暴自棄になっていく気持ちは小野崎も理解できるはず。
「学校は社会の縮図。それに子どもは身近な大人の背中を見て育つから」と津村は言う。身近に誰もお手本となるような大人がいない栗田にとって、唯一自分と真正面から向き合い、叱ってくれた八木は希望。その手を取ることができなかった後悔は、「八木さんの意識が戻って、怖かった。でも俺、嬉しかった。嬉しかったんです」という証言台での告白から伝わってくる。小野崎は法廷ですべての真実を明らかにし、栗田にもう一度八木の手を取るチャンスを与えた。真実義務と誠実義務が、天秤の上で調和している。
安堂は「懲役2年、執行猶予3年、その猶予の期間中保護観察に付する」という判決を下した。無罪を勝ち取ることがすべてじゃない。自分で「よし」と納得できる結果を導き出した小野崎は、法と正義を象徴するテミス像にもう後ろめたさを感じずにいられるのではないか。シンメトリーといえば、安堂と小野崎のかけ合いも絶妙なバランスによって噛み合っている。印象的だったのは、教室でのシーン。一人で思考を巡らせる安堂に、小野崎が「今、何かが頭に浮かびました?」と問う。もしかしたら小野崎は安堂をわかろうとしてくれる人なのかもしれない。
■放送情報
ドラマ10『テミスの不確かな法廷』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送(全8回)
※毎週木曜24:35〜25:20再放送
NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信予定
出演:松山ケンイチ、鳴海唯、恒松祐里、山崎樹範、山田真歩、葉山奨之、小木茂光、入山法子、市川実日子、和久井映見、遠藤憲一 ほか
第2話ゲスト:山時聡真
原作:直島翔『テミスの不確かな法廷』
脚本:浜田秀哉
音楽:jizue
演出:吉川久岳(ランプ)、山下和徳、相良健一、富澤昭文
制作統括:橋立聖史(ランプ)、神林伸太郎(NHKエンタープライズ)、渡辺悟(NHK)
写真提供=NHK