キム・ダミ、初の母親役で新境地へ パク・ヘスとの最強タッグ『大洪水』は予想外の展開
キム・ダミ主演映画『大洪水』が12月19日からNetflixで独占配信がスタートした。大洪水により滅亡の危機に直面した地球最後の日、浸水したマンションの中で人類が生き残るために繰り広げられる死闘を描いたSFパニック映画だ。キム・ダミは、事故で夫を亡くし息子を一人で育てている、人工知能(AI)開発研究者のアンナ役を演じている。本作を観始めて、大災害におけるパニックスリラーの要素が強いのかと思いきや、物語は予想外の展開に。
マンションが浸水し、子どもを連れて逃げ惑うアンナに“新人類を創る”という任務を伝え、彼女を救出するために現れるヒジョ(パク・ヘス)。屋上に到着するヘリに連れて行くのがヒジョの仕事なのだが、屋上へ行くまでに何かとトラブルが続出し、一筋縄ではいかない。序盤から驚きの展開がスピーディーに訪れるが、次第にロールプレイングゲームをしているかのような感覚に陥ってしまう。クライマックスへ向かい、少しずつ謎が明らかになっていくのだが、だんだんと母性に目覚めて変化していくキム・ダミの初めての母親役は成功している。
本作は、子を想う母アンナの言動にすべてがかかっており、母の愛を知らないヒジョ、アンナと母親との電話のシーン、マンションの廊下で産気づく住人など“母子の愛”がベースにある。筆者は一人の子を持つ母ゆえにアンナの気持ちも納得できるが、母の立場で観るか、人類を救うためのミッションとして観るか、どの視点で観るかで感じ方も変わってくるだろうし、思いがけない構成は好き嫌いが分かれるかもしれない。
ここで、キム・ダミについて振り返ってみよう。1995年4月9日生まれの今年30歳だ。子どもの頃からドラマに親しみ、大学で演技を学ぶかたわらモデルとしても活動。2017年には、韓国で実際に起こった性犯罪事件とSNSの闇深さを抉り出した映画『マリオネット 私が殺された日』で俳優デビューを果たす。同作でキム・ダミは、被害者となった主人公の学生時代を演じており、陰惨な場面にも全力で挑んでいる。
2018年には、バイオレンス・サイキック・アクション映画『The Witch/魔女』で、オーディションを勝ち抜いて主役の座を射止め、不思議な能力を持つク・ジャユン役を務める。遺伝子操作を行う特殊な施設で育ったジャユンは、8歳の時に施設を逃げ出し、すべての記憶を失ったまま酪農家の夫婦の娘として暮らす。10数年の歳月が過ぎた頃、ある出来事をきっかけに謎の男たちに追われる身となるのだが、田舎で素朴に育てられたジャユンが次第に“魔女”として覚醒していくさまは見事だ。結果、キム・ダミはファンタジア国際映画祭主演女優賞、大鐘賞映画祭と青龍映画賞の新人賞など賞レースを総なめにし、その存在感を見せつけた。 ちなみに、後年にドラマ『その年、私たちは』で恋人役となるチェ・ウシクも出演しているが、同作では激しく対立する関係のため、どちらも観てそのギャップや演技力の高まり具合を確認するのもいいかもしれない。