生方美久、坂元裕二を咀嚼し独自の作家性発揮 評論家が新作『嘘が嘘で嘘は嘘だ』を解説
そして最新作『嘘が嘘で嘘は嘘だ』の全4話という構成、そして“嘘”をテーマにした抽象度の高い設定は、生方にとってどのような挑戦となるのか。
「今回は、全4話なのでこぢんまりした作品を、好きなように書いているのかなぁと思います。主人公が4人で“嘘”がテーマという抽象的な話なので、『いちばんすきな花』の路線で書くのかなと期待していますし、本人もその路線が最も書きやすいのだと思います。その意味では観る人を選ぶタイプの作品になるかもしれませんが、4人の関係を描くという点で『カルテット』(TBS系)の流れも感じさせます。『カルテット』のように、あるあるネタを交えつつ抽象的なセリフのやり取りをするというのはもはやジャンルとして出来上がっている部分もあって、いま若手脚本家が、“あるあるネタを込めた気の利いたセリフ”を書くとすぐ坂元裕二のコピーと言われてしまう不遇な環境にありますが、生方さんはそこから一歩抜け出し、独自の作家性を確立しています」
成馬氏は、これまで二人三脚で歩んできた村瀬プロデューサーの手を離れ、新たな座組で作品を作り上げている点について、生方の今後のキャリアを占う重要な一歩になると期待を寄せる。
「座組も興味深いですね。演出は『silent』から組んでる高野舞さんですが今回のプロデューサーは村瀬健さんではなく、現在、『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)を担当している金城綾香さんが担当しています。キャストも独特で、菊地凛子さん、錦戸亮さん、竹原ピストルさん、塩野瑛久さんなど、全員が30代から40代以降の実力派が揃っています。おそらくフジテレビ以外の局からもオファーが多数来ていると思うのですが、そんななかでもう一度フジテレビで、ただし放送形態と座組みを変えて取り組むという動向の変遷も含めて気になる作家です。本人はただ書きたいものを書いているだけかもしれませんが、“次に何をするのか”が一番気になるドラマ作家だと思っています」
地上波連ドラでの活躍にとどまらず、新たな座組とフォーマットで“実験”ともとれる試みに挑む生方美久。実力派キャストたちと密室で繰り広げられる嘘と本音の応酬は、彼女の作家性をどのように拡張させるのか。
■放送・配信情報
『嘘が嘘で嘘は嘘だ』(全4話)
FODにて、12月24日(水)0:00~全話一挙先行配信
フジテレビにて、2026年1月11日(日)スタート 毎週日曜23:15~23:45放送
※放送日時は予告なく変更となる場合があり
出演:菊地凛子、錦戸亮、竹原ピストル、塩野瑛久ほか
脚本:生方美久
主題歌:FUJIBASE「yosuga」(kand production/ NTT DOCOMO Studio&Live)
プロデュース:金城綾香
演出:高野舞
制作プロダクション:AOI Pro.
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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