見取り図 盛山晋太郎、『ペリリュー』の映画化に感銘 「芸人は平和じゃないと成り立たない」

見取り図 盛山晋太郎が『ペリリュー』を語る

功績係は“現代のネットニュース”? 主人公・田丸に重ねる共感

ーー本作の主人公・田丸に関してはどんな印象を受けましたか?

盛山:感覚的にも田丸が一番現代人に近いんじゃないですかね。軍国主義だった日本の空気感に、いい意味で一番馴染めていない。平成、令和の人間にフィットしていて、読者目線でいてくれている印象があります。

――田丸は「功績係」を命じられます。遺族に向けて多少誇張しつつ勇姿を届ける仕事について、どんなことを感じましたか?

盛山:なかなか胸が痛かっただろうなと思います。並べるものではありませんが、時に誇張した見出しも見受けられる現代のネットニュースなんかも、功績係に近いのかなと思うこともありますね。

――共通点があるかもしれません。

盛山:僕、『ラヴィット!』(TBS系)でアイドルの方とゲーム対決をしたとき、ボケで「負けるようなことがあったら吉本辞めます!」って言ったんです。そのあとに出たネットニュースの見出しが「見取り図・盛山、吉本退社を強く希望」やったんです……これは功績係にやられたな、と思いました(笑)。といった冗談はさておき、田丸が記したその内容によって親族が報われるなら、それで良かったんじゃないかなと思いますね。

――そんな田丸と絆が生まれる吉敷についてはどんな印象がありますか?

盛山:吉敷はいいですよね〜。パーフェクトでナイスガイやし、またクールなのがいい。これ全員が好きになるキャラクターじゃないですか?

ーー他の登場人物も魅力的なキャラクターばかりです。

盛山:小杉伍長もいいですね。一人で生き抜く力があるし、我があるじゃないですか。吉敷はもちろんですけど、小杉にも惹かれます。僕のなかで一番カッコよくて、憧れの存在ですね。

ーー今回、一足先に映画をご覧になったそうですね。いかがでしたか?

盛山:もちろん原作をギュッとはするんですけど、全然取りこぼしてないし、原作そのままの面白さを感じましたね。あと映像で観ると音がすごいんですよ。あんなにかわいらしいイラストなのに、銃撃戦の音だけ聞くと、映画『プライベート・ライアン』を観ているかのような緊迫感を感じます。ただ、ポップだからこそ、戦争作品が苦手な方にもオススメできるなと思いましたね。

「お笑い芸人は平和じゃないと成り立たない」

――今回は田丸の声を俳優の板垣李光人さんが、吉敷の声を中村倫也さんが担当しています。おふたりの声の印象も聞かせてください。

盛山:実は、後で板垣さんや中村さんが声の出演をされていたと知ったので、ビックリしました。特に中村さんの声が、めっちゃ吉敷でしたよね? もし、お会いしたら「吉敷」って呼んでしまいそうなほどでした。板垣さんもご本人の雰囲気に合っていますよね。柔和な感じが素敵でした。僕は小杉がやりたかったな〜。でも小杉にしては鼻声すぎるか……。

――映画での印象的なシーンを教えてください。

盛山:原作でも好きなところなんですが、アメリカ軍の物資を奪いに行くところですね。緊張感のある場面から、みんなで飲食を共にする場面になるじゃないですか。あそこで一瞬、ホッとするというか。少尉にちょっとフランクにいく感じとか観ていて安心しました。あれがあるから、その後のシーンでいろいろな思いになりますね。

ーー映画をご覧になってどんなメッセージを受け取ったのか、どんな感情になったのか教えてください。

盛山:自分の仕事と照らし合わせてしまいました。大前提、お笑い芸人なんて平和じゃないと成り立たない職業ですからね。コロナで緊急事態宣言になったとき、真っ先にステイホームになったのは僕らだったんで……。なのでこの先もしっかり先人に感謝して、今を一生懸命生きようと思いました。

――楽しく生活をしていると「今、とても幸せな状況なのではないか」と感じることもあります。

盛山:そうですね。僕は「田丸のような方々がいたから今があるんだな」と常々思っているかもしれないです。田丸や吉敷から「なんて日本人になったんや!」と思われないためにも、あの人たちが誇れる人間になりたいですね。

――盛山さんには、田丸にとっての吉敷のような「戦友」と呼べる芸人仲間はいますか?

盛山:吉敷ってだいぶカッコいいですからね〜。難しいな〜。絶対相方のリリーなわけないしな〜。吉敷はだいぶカッコいいので、芸人なんかに当てはめたくはないですね。でも、戦友で言うたら、同期の吉田たちとかデルマパンゲとかネコニスズのヤマゲンとか、事務所は違いますけど、さらば青春の光とかですかね。大阪の劇場でお世話になったかまいたちさんは劇場のリーダーだったので(部下からの信頼を集めるリーダーの)、島田少尉かもしれないです。

――今年は終戦から80年です。本作をきっかけに改めて幅広い世代が歴史を知ること、勉強することにどんな思いがありますか?

盛山:僕も大人になって勉強したタイプなので、きっかけとしていいことだと思います。今こういった国際情勢ですし、このタイミングで自分の国の歴史を振り返るって、あって然るべきだと思いますね。そのきっかけとして、この漫画や映画は適していると思います。

ーー最後にこれから映画をご覧になる方に向けて、一足先に見た盛山さんならではの目線で見どころをお願いします。

盛山:アニメ映画で一番オススメしたい作品です。もちろんフィクションですが、史実に基づいてはいるので、100%フィクションではない。しかも、このかわいらしい柔らかいタッチだからこそ、より観やすいと思います。それこそ僕は、お子さんと一緒に観ても全然いいと思っています(本作はPG-12:12歳未満は保護者同伴が望ましく、助言・指導が必要)。『ペリリュー』を通じて、歴史を幼い頃から知れるのはすごくいいことだと思うんですよね。

『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』特集

映画『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』が12月5日より公開される。 戦争が楽園を地獄に変えた 史実に基づく戦火の友情物語…

■公開情報
『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』
12月5日(金)全国公開
キャスト:板垣李光人、中村倫也、天野宏郷、藤井雄太、茂木たかまさ、三上瑛士
原作:武田一義『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』(白泉社・ヤングアニマルコミックス)監督:久慈悟郎
脚本:西村ジュンジ・武田一義
キャラクターデザイン・総作画監督:中森良治
プロップデザイン:岩畑剛一、鈴木典孝
メカニックデザイン:神菊薫
美術設定:中島美佳、猿谷勝己(スタジオMAO)
コンセプトボード:益城貴昌、竹田悠介(Bamboo)
美術監督:岩谷邦子、加藤浩、坂上裕文(ととにゃん)
色彩設計:渡辺亜紀、長谷川一美(スタジオ・トイズ)
撮影監督:五十嵐慎一(スタジオトゥインクル)
3DCG監督:中野哲也(GEMBA)、髙橋慎一郎(STUDIOカチューシャ)
編集:小島俊彦(岡安プロモーション)
考証:鈴木貴昭
音響監督:横田知加子
音響制作:HALF H•P STUDIO
音楽:川井憲次
主題歌:上白石萌音「奇跡のようなこと」(UNIVERSAL MUSIC / Polydor Records)
制作:シンエイ動画 × 冨嶽
配給:東映
©武田一義・白泉社/2025「ペリリュー ー楽園のゲルニカー」製作委員会
公式サイト:https://peleliu-movie.jp/
公式X(旧Twitter):@peleliu_movie
公式Instagram:peleliu_movie
公式TikTok:@peleliu_movie

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