山田孝之、清原果耶、横浜流星ら 『イクサガミ』の世界観を成り立たせる名優たちを総括
百六十八番・衣笠彩八(清原果耶)
筆者が個人的に待ち望んだ、もっとも正しい清原果耶の使い方をしてくれた。彼女は、俳優なのに営業スマイルが得意ではないイメージがある。自然に笑ったときの笑顔はもちろんすばらしいが、彼女の真骨頂は、「仏頂面やしかめっ面の美しさ」にある。だからこそ、この衣笠彩八のように「強く、笑わず、冷たい」役は、これ以上ないハマり役だ。
桑名宿で赤山宋適(山中崇)が雇った多勢の荒くれ者との戦闘時、赤山が発した「女はお前らの好きにしろ! ぎゃははははは(ゲス笑い)」との発言を聞いたとき、彩八の顔色が変わる。わかりやすい表情の芝居はしていないが、一瞬で戦闘モードになったことがわかる。顔ではなく、オーラで芝居しているかのようだ。この後繰り広げられる長回しの大集団戦は、このシーンを観るだけでも「Netflixに加入して良かった」と思えるほどの名シーンだ。またすばらしいのが、戦闘前にゲス発言をした赤山への彩八のとどめの下段突きが、この乱闘のシメになっている点だ。実に溜飲が下がる。
最初はお荷物だと思っていた香月双葉(藤﨑ゆみあ)への態度も、徐々に姉貴分的なそれに変わりつつある。第2章での活躍が、もっとも期待されるひとりである。
二百二十二番・天明刀弥(横浜流星)
本作の配役が次々と発表される中、この天明刀弥のキャストは発表されずじまいだった。最重要キャラのひとりだが、この第1章では、まだ登場しないかのかと思っていた。だからこそ、最後の最後に横浜流星が登場したときには、大声で叫んでしまった。
原作における刀弥の父は、あの新選組の沖田総司と対戦経験がある。10歳時の刀弥の強さを見た父が、「あの沖田にも勝るとも劣らぬほど」と感じるシーンがある。今後、ドラマでこの父との特殊な関係性が描かれるかはわからない。ただ、それだけの天賦の才に恵まれた男であるということだ。
ドラマ初登場時の刀弥は、逃げまどう蠱毒参加者たちを追いかけている。真剣に逃げる男たちに対し、刀弥は「待ってよ~」「もっと遊ぼうよ~」と、大人にせがむ子供のようである。だがその子供っぽさとは裏腹に、その剣のキレはすさまじく、複数の相手を一刀のもとに屠っていく。特筆すべきは、不安定な石段上での完璧なフォームの後ろ回し蹴りである。高速の殺陣の合間での蹴りであり、足場を確認する間もない。その度胸、バランス感覚ともに、さすがは極真の空手家である。
とどめを刺すときも、「エイッ♡」とあくまでかわいく、その子供っぽさが禍々しいほどに恐ろしい。槐が蠱毒のことを「遊び」と称していた。槐の場合は、あくまで皮肉としてそう例えている。だがこの刀弥は、本当に「遊び」感覚で殺し合っているように見える。どんな分野でも、修行のようにストイックに頑張っている人間よりも、純粋に(苦しいことであっても)楽しんでしまえる人間がいちばん強いのだ。
かつて横浜流星が、「岡田准一と戦いたい」と語ったことがある。その頃は、「いつか実現したらいいなぁ」ぐらいの夢物語感覚だったが、ここに来て、にわかに現実味を帯びてきた。この対決が実現したとき、世界の映像におけるアクションの歴史が、大きく塗り替えられるはずだ。決して、おおげさではなく。
■配信情報
Netflixシリーズ『イクサガミ』
Netflixにて世界独占配信中
主演・プロデューサー・アクションプランナー:岡田准一
出演:藤﨑ゆみあ、清原果耶、東出昌大、染谷将太、早乙女太一、遠藤雄弥、岡崎体育、城 桧吏、淵上泰史、榎木孝明、酒向芳、松尾諭、矢柴俊博、黒田大輔、吉原光夫、一ノ瀬ワタル、笹野高史、松浦祐也、宇崎竜童、井浦新、田中哲司、中島歩、山田孝之、吉岡里帆、二宮和也、玉木宏、伊藤英明、濱田岳、阿部寛
原作:今村翔吾『イクサガミ』シリーズ(講談社文庫刊)
監督:藤井道人、山口健人、山本透
脚本:藤井道人、山口健人、八代理沙
音楽:大間々昴
撮影:今村圭佑、山田弘樹
照明:平林達弥、野田真基
プロダクションデザイナー:宮守由衣
衣装デザイン:宮本まさ江
キャラクタースーパーバイザー:橋本申二
VFX:横石淳
助監督:山本透、平林克理
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一
プロデューサー:押田興将
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
企画・製作:Netflix