興収で読む北米映画トレンド

『グランド・イリュージョン』最新作が北米No.1 『ランニング・マン』惜しくも敗れる

 11月14日~16日の北米映画週末ランキングは、秋の2大ジャンル映画が激突し、思わぬ結果をみせた。初登場No.1に輝いたのは、人気クライム映画『グランド・イリュージョン』シリーズ最新作『グランド・イリュージョン/ダイヤモンド・ミッション』。北米3403館で週末興行収入2130万ドルという予想以上のスタートとなった。

 4人のイリュージョニスト集団「フォー・ホースメン」が巨大な陰謀や犯罪に立ち向かう本シリーズは、第1作『グランド・イリュージョン』(2013年)、第2作『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』(2016年)が製作され、今回が9年ぶりの第3作となる。

 出演者にはジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソン、アイラ・フィッシャー、デイヴ・フランコらが続投し、新世代キャストも加わった。監督は『ヴェノム』(2018年)や『ゾンビランド』シリーズのルーベン・フライシャー。

 Rotten Tomatoesでは批評家スコア59%・観客スコア81%、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B+」と評価はまずまずだが、観客の支持が比較的大きいことは興行には有利だ。観客は女性が全体の半数以上、25歳以上が65%という比率だが、SNS(とりわけTikTok)でのプロモーションも功を奏したとみられている。

 もっとも最大のポイントは、本作が北米以上に海外市場で注目されていることだ。海外64市場での週末興収は5420万ドルで、世界興収は7550万ドル。前作に続き中国市場での人気が高く、単独で1920万ドルと北米並みの成績となっている。

 製作費は9000万ドルだから、配給のライオンズゲートにとっては最近の作品でも指折りの成績。すでに企画が進んでいる続編(4作目)にとっても追い風となるだろう。日本公開は2026年初夏なので、およそ半年間のお預けとなる。日本配給はKADOKAWA。

 第2位は『トップガン マーヴェリック』(2022年)のグレン・パウエル主演、『ベイビー・ドライバー』(2017年)のエドガー・ライト監督によるアクション映画『ランニング・マン』。北米3534館で週末興収1700万ドルとやや厳しい滑り出しだ。

『ランニング・マン』©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 本作はスティーヴン・キングが別名義で執筆した小説に基づいており、映画化はアーノルド・シュワルツェネッガー主演『バトルランナー』(1987年)以来2度目。近未来、パウエル演じる無職・一文無しの男ベン・リチャーズは重病の娘を救うため、最凶のリアリティショー「ランニング・マン」に参加する。命を狙うハンターと、賞金目当ての全視聴者から、ベンは命がけで30日間逃げ切らなければならない――。

 海外58市場では興行収入1120万ドルで、世界興収はわずか2820万ドル。公開規模と製作費1億1000万ドルを鑑みれば、残念ながら思わぬ不発というほかない。新たなスターとして上り調子が続いていたパウエルにとっても、久々のアクション回帰となったライト監督にとっても喜ばしくない数字だろう。

 もともとパラマウント・ピクチャーズは北米だけで2000万ドル級の発進に期待していたというが、なぜこのような結果となったのか。むろん、ここにはいくつもの要因がある。

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