宮﨑駿、押井守、庵野秀明ら 相次ぐ名作アニメリバイバル&再評価の歴史とは?
世界に継承されていく「Anime」
「Anime」は単に映像作品としてだけでなく、関連する文化も含めて日本を世界に知らしめた。
『AKIRA』に参加していた井上俊之や高坂希太郎は、宮﨑監督や高畑勲監督が立ち上げたスタジオジブリの作品にも参加している。ジブリ作品の世界における受容は、「Anime」の広がりとは少し文脈が違っている。1996年、徳間書店が日本ではすでにジブリ作品のパッケージ販売を手がけるようになっていたディズニーと提携して、本格的な海外展開を始めるようになった。『もののけ姫』が海外で評判となり、『千と千尋の神隠し』(2001年)が第52回ベルリン国際映画祭の金熊賞や第75回アカデミー賞の長編アニメ映画賞を獲得するに至ったのは、この提携が実を結んだからだ。
他のディズニー作品と同列に展開されつつ、宮﨑駿監督の作家性と監督自身も含む参加したアニメーターやクリエイターの技量が、ジブリ作品を世界に浸透させた。第38回東京国際映画祭に『アメリと雨の物語』で参加したリアン=チョー・ハン監督は、11月2日に開催されたシンポジウム「アニメーションだからできること」に登壇し、影響を受けた作品を聞かれて「『もののけ姫』を12回観た。『火垂るの墓』も観てシャワー室にこもって泣いた」と告白し、自作にも影響を受けていることを話した。同じようにジブリ作品の影響を受けたクリエイターが世界にいて、これから続々と作品を送り出してくることだろう。
『AKIRA』や、マッドハウスが制作した川尻善昭監督『獣兵衛忍風帖』(1993年)のような、海外には少ないバイオレンス性を持った作品なり、『天地無用!』シリーズのAICが得意としたメカや美少女に溢れた作品など、これぞ「Anime」と言える作品も、『キル・ビル』の例があるように世界に浸透している。マッドハウスで川尻監督が手がけた『バンパイアハンターD』(2000年)は、日本より先に北米で公開されてDVDも好セールスを記録した。2月にリマスター版の上映が日本で実施され、初めて観てそのハイクオリティぶりに驚いた人もいるかもしれない。
マッドハウスは『パト2』や「彼女の想いで」に参加していた今敏に監督を任せて『PERFECT BLUE』(1997年)や『千年女優』(2002年)といったアニメ映画を監督させ、世界で今なお高く評価され、実写の監督も含めたクリエイターに影響を与える存在になる道を開いた。そうしたオリジナリティを持ったハイクオリティの作画による「Anime」を求める流れは、神山健治監督が『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』(2024年)で手描きの作画を求められたように、今も続いている。
『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』の映画が海外でも大ヒットし、『ダンダダン』や『SAKAMOTO DAYS』のTVシリーズが配信を通して人気となっている状況も、そうした延長線上にあるものだが、かつての「Anime」なりジブリ作品のようなオリジナリティという部分が少し違っている。そこを埋める存在として、『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』とヒット作を連発している新海誠監督や、11月21日に公開される『果てしなきスカーレット』の細田守監督がいる。東宝とソニー・ピクチャーズ エンタテインメント共同配給が決まっている細田監督の新作が、世界にどれだけの驚きを与えるかが「Anime」の現在地を探る上で注目したいポイントだ。