“競馬”ファンも急増? 『ザ・ロイヤルファミリー』は『国宝』と重なる“血”の物語に

『ザ・ロイヤルファミリー』競馬ファン急増?

 近年、日本の「働く」をテーマに熱いドラマを展開してきたTBS「日曜劇場」。医者や刑事ものも多いが、やはり『半沢直樹』(2013年)や『下町ロケット』(2015年)、『キャスター』(2025年)といった企業ものが「お箱」と言っていいだろう。

 そして、今回の舞台は、満を持しての「JRA日本中央競馬会」である。原作は早見和真の同名小説『ザ・ロイヤルファミリー』。監督は、同枠の『海に眠るダイヤモンド』(2024年)が記憶に新しい、塚原あゆ子だ。『アンナチュラル』(2018年)、『グランメゾン東京』(2019年)、そして映画『ラストマイル』(2024年)と、お仕事ドラマの名手とあって、期待しかない。

 お仕事ドラマのいいところの一つに、知らなかった業界の裏が知れる、という面がある。「競馬」というのも、意外と知らない業界だ。オグリキャップやディープインパクトといった名馬の名前くらいは知っていても、「競馬ってギャンブルでしょ」というイメージしかなく、馬券を買ったことも、競馬場に足を踏み入れたこともない人も多いだろう。まして馬主というのも縁遠い存在であり、好奇心も十分に刺激されそうだ。

 初回は、やはり競馬のことなどほとんど何も知らない税理士・栗須栄治(妻夫木聡)が、会社社長で馬主の山王耕造(佐藤浩市)と出会うところから始まる。

 場所は、北海道の馬のせり場。サラブレッドを売買するところなど見たことがないので、まずそれが興味深い。1千万単位で馬主たちが入札していく、その豪快さに驚かされた。思った以上に大きな金が動く、真剣勝負の場であることが伝わってくる。

 そこから広大な馬の牧場へ案内され、そこで走る馬たちの様子が映し出される。これがとんでもなく美しい。サラブレッドというのはこんなに勇壮で優美な生き物かと思わされる、神々しいような映像が繰り広げられる。この辺りから、主人公と一緒に、観ているこちらもどんどん馬の世界に引き込まれていく。

 調教師、ジョッキー、競馬新聞の記者と、次から次へと競馬の裏側を主人公と共に初体験していくにつれ、最初はなんの思い入れもないはずだった競馬の世界に、一歩足を踏み入れたような感覚になっていく。耕造の馬・ロイヤルファイトがライバルのウィングドイルと新潟競馬場を走るシーンでは、まだドラマが始まって1時間も経っていないはずなのに、その迫力と臨場感に思わず力が入り、いつの間にかファイトを応援してしまっている自分がいた。主人公の栗須が「いけー!」と叫び、耕造の襟首を掴んでしまったのも納得だ。

 お仕事ドラマとしての「日曜劇場」らしさももちろん健在だ。山王社長肝入りの競馬事業は社長息子の山王優太郎(小泉孝太郎)に赤字部門として撤退を迫られている。社長による経費の私的流用が疑われ、一度は競馬部門は廃止案件となり、競馬馬の売却の話にもなる。しかし、馬たちに心奪われ始めていた栗須は税理士としての腕を見せ、社長の濡れ衣を晴らす。王道の展開ではあるが、栗須と耕造のキャラクターが際立った名シーンだった。栗須は地味だが、「助けたい」と感じたときには本領を発揮するタイプのようだ。一方の耕造は、ワガママでワンマンのように見えて、実はどうしても部下を疑うことができないような、情に厚いところがあるようだった。

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