『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』“原点回帰”で味わう最後の冒険

『007』シリーズのジェームズ・ボンドのように、演じる俳優が次々と変わっていくアクション映画もあれば、俳優のイメージと強く結びついて「このキャラクターを演じるのは彼以外には考えられない」というシリーズ作品もある。インディ・ジョーンズシリーズのハリソン・フォードは、まさにその典型だろう。1981年公開の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から始まり、足かけ42年も冒険好きの考古学者インディ・ジョーンズを演じ続けた。その第5作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023年)が『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で地上波初放送される。

アメリカの映画ファンや評論家たちの間では、映画の質を落とす馬鹿げた設定や、有り得ないシチュエーションを指す「Nuking the Fridge(冷蔵庫を核攻撃)」というミームがある。これは第4作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)の公開時に生まれたワードで、核爆発から身を守るためにインディが冷蔵庫の中に隠れるシーンを例えたものだ。
この第4作は脚本担当のデヴィッド・コープ自身が、監督のスティーヴン・スピルバーグにオチを変えるよう直談判したほど荒唐無稽な結末を迎えるわけだが、前述のミームを含めた4作目への酷評は、第3作『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)から19年ぶりの新作と、ハリソンのインディ・ジョーンズがスクリーンにカムバックといった期待感が大きかったゆえの裏返しでもあっただろう。

だからこそ……というわけでもないだろうが、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』は、アルキメデスのダイヤルを巡るナチスとインディの攻防戦という、オーソドックスな“神秘の秘宝の争奪戦”に原点回帰している(ちなみに第4作の敵はソ連軍だった)。
第4作『クリスタル・スカルの王国』から15年ぶりの新作となり、撮影当時79歳のハリソンを回想シーンで30代後半に見えるようデジタル加工が施されたシーンがある。ルーカスフィルム傘下の特殊効果スタジオILM(インダストリアル・ライト&マジック)による技術で、これぞまさしく映画のマジック! 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』に出演した頃のような若々しいインディと、現在の年齢のインディが共存している珍しい映画でもある。

ルーカスフィルムに眠る膨大なハリソンのアーカイブ映像を元に、AI技術を応用して、演技中のハリソンの顔に付けた小さなマーキングに合わせ若い顔に加工したという。これも映画を取り巻く技術が向上した2020年代の今だからこそ可能な作品だろう。その意味では、ちゃんと今だからこそできる最新技術を投入した現代版インディ・ジョーンズなのだ。




















