山田洋次監督と倍賞千恵子の熱いハグも 『TOKYOタクシー』メイキング写真公開

 11月21日に公開される、倍賞千恵子と木村拓哉が共演する山田洋次監督の新作映画『TOKYOタクシー』のメイキング写真が公開された。

 本作は、2022年に日本公開されたフランス映画『パリタクシー』を日本を舞台に置き換えリメイクしたヒューマンドラマ。さえない日々を送るタクシー運転手と、彼が偶然乗せることになった、人生の終活に向かうマダムとの運命的な出会いと奇跡を描く。

 山田監督作品には欠かせない女優・倍賞が、終活に向かうマダム・高野すみれを演じる。また、『武士の一分』以来19年ぶりの山田組参加となる木村が、そんなすみれを乗せるタクシー運転手・宇佐美浩二役を担った。そのほか、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、神野三鈴、イ・ジュニョン、笹野高史が共演に名を連ねている。

 公開されたメイキング写真には、倍賞と木村、山田監督がロケ撮影中に楽しそうに談笑する様子や、木村がタクシーを運転する様子、蒼井とイ・ジュニョンがダンスホールで踊る様子、そしてクランクアップを迎えた山田監督が倍賞と熱いハグを交わす様子など、熱い想いをもって撮影に臨むキャスト陣の姿が写し出されている。

 2025年2月にクランクインを迎えた本作では、柴又や横浜でのロケ撮影に加え、本編の大半を占める走行中のタクシー車内でのシーンの撮影には、セットの中に置かれたタクシーの周りを取り囲むように立つLEDパネルに車窓の風景を映し出しながら撮影する“バーチャルプロダクション”という山田組にとって初となる技術も活用された。倍賞の初日となった2月5日は、すみれが高齢者施設に向かうために家を出てくるシーンから撮影がスタート。「どことなく謎めいたお金持ちのマダム」という、これまで山田組で演じてきた役柄とはまったく違った人物像を演じるとあって撮影前の打ち合わせ時点から強いこだわりを見せていた倍賞は、2度の衣装合わせの末に決まったという鮮やかな紫色のコートとサングラスを身にまとい、司法書士役の笹野との軽快なやり取りを繰り広げた。

 午後には木村も合流し、柴又帝釈天の山門前に着いた浩二のタクシーにすみれが乗り込むシーンが撮影された。クランクイン前に実際の個人タクシーの運転手から指導を受けて所作や運転の練習をしていた木村は、撮影当日に「最初のテスト撮影から運転してみてもいい?」と颯爽と車に乗り込むと、トランシーバーでやり取りしながら実際のコースを走行。テストの後にはスタート位置まで自分で運転して戻り、本番の撮影も見事一発OKを決めてみせた。

 2月17日からは、休みを挟みながら2週間ほどかけてバーチャルプロダクションスタジオでの撮影が行われた。木村はLEDウォールに流れる車窓の風景に合わせてウィンカーを出したり、ハンドルを回したりブレーキを踏んだりしながら、カメラが正面にあるときにはわずかな隙間から映っている道を見ながら運転するなど、慣れないバーチャルプロダクションによる運転シーンの撮影でも所作をなおざりにせずタクシー運転手役を見事に演じた。制作発表会見で「木村くんの素の魅力を盗み撮りたい」と語っていた山田監督は、台本を書き直したり何度もテイクを重ねて撮ったりとタクシー車内での会話シーンに並々ならぬこだわりを詰め込み、木村と倍賞もそれに応えたことで、すみれと浩二が車内で会話を繰り広げるシーンはとても印象的なものになった。

 撮影の待ち時間には倍賞と山田監督が昔の話を始め、木村も加わって3人で並んで話す姿がたびたび見られた。何日もセットに籠って続く撮影でも2人は大変そうな様子をまったく見せず、劇中ですみれと浩二の距離がだんだんと縮まっていったように、倍賞と木村も3月に入る頃にはおいしいお店を教え合ったりと、すっかり打ち解けていた。

 また、若き日のすみれの人生が描かれる過去パートの撮影は、日数こそ少ないものの密度 の濃いものとなった。山田監督はすみれの夫・小川(迫田孝也)のキャラクター造形にかな り腐心し、知人の精神科医・名越康文に話を聞いたり、セットの飾りを何度も考え直したり と工夫を凝らしながら、現代パートとは画調も撮り方も変えて撮影が行われた。

 オールアップとなる最後の撮影は、若き日のすみれ(蒼井優)とキム(イ・ジュニョン)がダンスホールで踊るロマンチックなシーン。横浜の古いダンスホールを借りての撮影だ。蒼井とイ・ジュニョンは、ダンス指導の先生との練習日を本番前に1日だけ設けて、全体を合わせてから当日を迎えた。山田監督が「(蒼井)優ちゃんとのキスシーンもあるんだよ」とからかって言うと照れて恐縮していたイ・ジュニョンだが、撮影になると真剣そのもの。頼りがいのあるイ・ジュニョンとの撮影に蒼井も楽しそうな笑顔を見せていた。無事にオールアップを迎えた撮影現場にはサプライズで倍賞と迫田が現れ、クランクアップの花束が倍賞から山田監督へ渡された。

 50年以上の付き合いになる倍賞との熱いハグを交わした山田監督は、「今までいろんな映画を撮ってきたけど、今回はひとしおだね。無事にこの日を迎えられるか、クランクインの時は心配だった。だけど、スタッフの力でここまでたどり着くことが出来ました。どうもありがとう」と帽子を取って頭を下げた。全キャスト、スタッフが真剣に、かつ和やかに仕事をした2カ月間だった。

■公開情報
『TOKYOタクシー』
11月21日(金)全国ロードショー
出演:倍賞千恵子、木村拓哉、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、神野三鈴、イ・ジュニョン、マキタスポーツ、北山雅康、木村優来、小林稔侍、笹野高史
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝原雄三
原作:映画『パリタクシー』(監督:クリスチャン・カリオン)
配給:松竹
©2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会

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