木村文乃×ラウールが教えてくれた“愛” 『愛の、がっこう。』最終回で納得の「。」の意味

昼の世界を生きる愛実(木村文乃)と夜の世界で生きてきたカヲル(ラウール)。2人の空がようやく一つになる。昼と夜が混ざり合うマジックアワーの空に上がった花火が、まるで愛実とカヲルを祝福しているかのようだった。
カヲルの“卒業試験”が描かれた『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)最終話。愛実と昼の世界を共に生きていくため、カヲルは高卒資格を得られる美容学校への入学を目指す。識字に困難を抱えるカヲルにとっての難関は学力テストと作文。愛実は合理的配慮の申請をと提案するが、カヲルは突っぱねる。他の人と同じ条件下で評価されたかったのだ。

カヲルは人一倍、他者から評価されることにこだわる。それは幼い頃から読み書きが苦手という一点のみで人に見下され、失望され、劣等感を味わってきたからだ。同じ数字で評価される世界でもホストクラブなら、カヲルも力を発揮することができた。
それに、愛を望みたくても望めなかったカヲルにとって、一歩外に出れば現実に戻る嘘の世界は自分の気持ちさえ騙すことができて心地良かったのではないか。けれど、愛実と出会って初めて愛を望むことができた。

その愛を掴むため、落ちたら愛実と別れるという負荷をかけてまで苦手なことに向き合ったカヲルだったが、突きつけられたのは不合格という残酷な結果。一方で、学校側は春にもう一度試験を受けることをカヲルに勧める。カヲルのホストとしての経験は決して無駄なんかではない。いろんな人を見てきたからこそ、広い視野を持つカヲルに箱入り娘の愛実も教わることがたくさんあった。けれど、母親に見捨てられた心の傷は深く、カヲルは愛実にがっかりされたくないと別れを告げる。「あんたも俺のこと見下してんだろ!」と声を荒げるカヲルは怯える子供のようだった。
奈央(りょう)がカヲルと向き合うことができなかったのは自分と同一視していたからだ。カヲルがバカにされることは、自分がバカにされること。奈央が見捨てたのは、カヲルではなく自分だった。でも、愛実はカヲルが世間からどう思われてようと関係ない。目の前にいるカヲルが、ただ、愛しいからそばにいる。それだけだった。カヲルの“卒業試験”は美容学校に合格することがゴールではない。その愛を信じて手を伸ばし、享受することだったのではないだろうか。
かつてお別れ遠足で行った三浦海岸の花火大会が数年ぶりに復活する日。一人で食堂に忘れた日傘を取りに訪れた愛実は、店員から一通の手紙を渡される。そこには、「先生に会って、俺はずっと誰かにほんとの気持ちを言いたくて生きてきたのかもって柄にもなく思ったよ」というカヲルの本音が綴られていた。

本作は、愛なんて恥ずかしくて口に出すのも憚れる時代に、少しも茶化さずに愛と向き合ってきた。この作品そのものが、「愛のがっこう」だったとも言えるだろう。私たちは誰かを愛さずにはいられない生き物だ。けれど、愛は時に鋭利な刃物になって、自分や他者を傷つける。だったら、はじめから誰も愛さない方がいいと殻に閉じこもってしまったり、あるいは明瞭で後腐れのないお金で買える愛に安心感を覚えたりする。カヲルもまた一度は愛を捨て、元いた嘘の世界に戻ろうとした。けれど、愛実を愛する気持ちだけは偽ることができなかったのだろう。カヲルの手紙は、句点ではなく読点で終わっていた。
「愛という字を書くのは難しい。真ん中の心が小さすぎても、大きすぎても不格好になる」
愛実との愛を掴み、“卒業試験”に合格したカヲル。愛は不確かで、脆い。でも、愛の種さえ残っていれば、再び新しい芽は咲くことを本作は教えてくれた。第1話から少しずつ上達してきたカヲルの手書きによる『愛の、がっこう。』のタイトルバックをもって、この物語には句点が打たれた。けれど、愛実と大雅の愛の軌跡は、これからも続いていくのだ。
井上由美子が完全オリジナルストーリーで描く、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、惹かれ合うラブストーリー。高校教師・小川愛実が、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲルに秘密の“個人授業”を続ける中で次第に距離を縮めていく。
■配信情報
木曜劇場『愛の、がっこう。』
FOD、TVerにて配信中
出演:木村文乃、ラウール(Snow Man)、田中みな実、中島歩、坂口涼太郎、味方良介、野波麻帆、早坂美海、荒井啓志、別府由来、りょう、筒井真理子、酒向芳、沢村一樹
脚本:井上由美子
演出:西谷弘
プロデュース:栗原彩乃
音楽:菅野祐悟
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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