『明日はもっと、いい日になる』が描いた児相の過酷さ みんなの笑顔が溢れるラストに

警察は虐待の疑いだけでは動けず、病院も本人を連れていかなければ治療ができない。その意味で児相は子どもの命を守る最前線であり、同時に最後の砦だ。だからこそ、翼たちは子どもたちの声に必死に耳を傾ける。これまでは、どちらかといえば保守的だった所長の桜木(勝村政信)がひっきりなしに入るクレームを「こっちは子どもの命が懸かってるんですよ。これじゃあ、本当にSOS出してる子どもの声が聞こえなくなるだろ!」と跳ね返す場面は児相としての矜持を体現しているようでかっこよかった。
一方で、さまざまな理由から声を上げられない子どももいる。明らかに虐待とみられる傷を負っていても両親を庇っていた蒼空の声は、翼が部屋から見つけた日記に隠されていた。ストレスのはけ口を家族に向ける暴力的な父親から母親を守るため、自ら犠牲となっていた蒼空。本来なら、子どものヒーローとなるべき大人が、その役目を子どもに押し付けていたのだ。お前はゴミだと洗脳されて育った蒼空も、ヒーローとしての役目にある種の生きる意味を見出していたのだろう。

だが、蒼空の本当の願いを、同じ団地で仲良くなった陸(長尾翼)は聞いていた。虐待の瞬間を目撃していた陸は蒼空から「僕は大丈夫だから。また一緒に遊んで」と言われたと言う。そこに蒼空が、「蒼空くんはどうしたい?」という翼の問いに対する答えが詰まっている。父親の存在に怯えることなく、友達と一緒に遊びたい。母親を守るため、押し殺してきたその声を翼は拾い上げる。最後は陸がおもちゃで録音していた音声が証拠となり、蒼空は正式に保護された。

「少しでも多くの声を聞いてあげてください」という蔵田の台詞は、私たち一人ひとりに向けられたものだ。幼い頃から、たくさんの人を助ける刑事になりたいという夢を抱いていた翼。しかし、刑事でなくとも、困っている人や助けを求める人の力になることはできる。身近な人、それこそ親であれば、自分の子どもの声に耳を傾けることがその一歩となるだろう。
一方で、親も万全ではない。浜瀬市児童相談所へのクレームの嵐がやんだ裏には、夢乃(尾碕真花)の活躍もあった。かつては一人ですべてを抱え込み、その怒りの矛先を叶夢(千葉惣二朗)と奏夢(小時田咲空)に向けていた夢乃。再び親子での暮らしをスタートさせることになった彼女は、「何かあったらすぐに駆け込みます」と翼たちに告げる。誰もが困った時は助けを求めることができ、そしてその声に一人ひとりが耳を傾けられる社会になれば、明日はもっといい日になるのではないだろうか。みんなの笑顔が溢れるラストシーンにはそんな願いが込められているような気がした。
児童相談所を舞台に、そこで働く個性的な面々たちがこどもたちの純粋な思いに胸を打たれ、その親までも救っていく姿描く完全オリジナルストーリーのヒューマンドラマ。
■配信情報
『明日はもっと、いい日になる』
TVer、FODにて配信中
出演:福原遥、林遣都、生田絵梨花、小林きな子、濱尾ノリタカ、莉子、西山潤、町田悠宇、勝村政信、風間俊介、柳葉敏郎ほか
脚本:谷碧仁(劇団時間制作)ほか
演出:相沢秀幸、下畠優太、保坂昭一
プロデュース:宮﨑暖
主題歌:JUJU「小さな歌」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作プロデュース:熊谷理恵、三浦和佳奈
制作協力:大映テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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